- ――今回は、別れてしまったあとの物語なんですね。
- 【清水】 これは悲しい歌詞なんですけれど、もっとも描きたかったことは、2番のBメロに凝縮されています。忘れられなくて苦しくて。それでも時間が経つことによってその上にいろんなモノが重なっていって、大丈夫になっていく。その瞬間を描きたかった。
- ――時間が経つとやっと現実を見つめることができるようになりますよね。逆にいうと時間が経たないと、なかなか現実と向かい合えない。
- 【清水】 これはひとつの問いかけでもあって、失恋をして“君のことが忘れられない”ということは、自分にとって苦しいことなのか、それとも忘れたくないのか。その答えがどっちであったとしても、時間が経てば現実を見つめ出すんだということ。それが今回、ひとつの感情としてのテーマになっているのかな?と思うんですよね。要は歌詞にある<引っ越す>という決断は、相手を忘れるための決断はもちろん、それだけじゃなくて一歩前に進まなきゃいけないんだという決断だと思うんですよ。
- ――苦しいですよね。忘れたいんだけど忘れたくない。
- 【清水】 そうなんですよね。この瞬間は忘れたいんですけど、時間が経って本当に忘れてしまうこともイヤなんですよ。それも全部ひっくるめてここに止まっているワケにはいかないから、それが引っ越しという決断だったのかな?と。
- ――“僕”の目を通した街の景色が物語とともに見えてきそうです。
- 【清水】 この物語がまず頭に浮かんで、それを曲にするという、今までとは違った曲の作り方だったんですよ。なのでちょっと難しかったんですけど、そういう書き方をしたおかげで、今まで使ったことのないような言葉がいっぱい出てきたりしたんですよね。引っ越しという言葉もそうですし、そういう具体的な言葉を出すことは今までになかったので。
- ――この歌を聴いた人は、たぶん自分の街の駅を思い浮かべて主人公になるでしょうね。
- 【清水】 僕でさえも今住んでいる街の駅を思い浮かべながら書きましたからね。しかも東口に出るんです(笑)。
- ――だから<僕は東口を出てみた>って歌詞なんですね(笑)。あと思ったのは、引っ越したあとに、<あの街>は、<君に会いたくなるだけの 何でもない街>になり、<この街>は、<君に会えなくなるだけの 何でもない街>になった、この微妙な変化の切なさがいいです。絶対に“何でもない街”ではないのにね。
- 【清水】 そうなんですよ。絶対に“君”との思い出が詰まっていたり、いろんなところに歴史が刻まれているんだから、絶対に“何でもない街”ではないんですけど、この歌の主人公の感情を表現しようとすると、こうなる。その1行前があってこその“何でもない街”なんですよね。
- ――過去の恋愛を引きずるのは男性のほうが多いと言いますけど。
- 【清水】 いや〜僕もやっぱりそうじゃないですかね?失恋はなかなか苦しいものですよね…。この曲をいろんな人に聴いてもらったところ、もっとも男性に共感されたのが、一番最初のブロックなんですよ。
- ――<駅のホームで君と似ている人を見つけた>というくだりですね。
- 【清水】 そういう経験は皆、何かしらあるんですよね。絶対にこんなところにいるはずがないとわかっていても……特に僕、O型の魚座なんで(笑)。
- ――翔太くん、愛に生きる人なんですね(笑)。
- 【清水】 (笑)ロマンティストなんですよ。なのでこの曲は、ひとつの物語として完成しているので、物語を読むように聴いてもらいたいですね。特に、僕には今まであまりこういう曲がなかったので。
- ―― 一方、M2の「Don’t Cry」は、清水翔太らしさが出ている。
- 【清水】 これは2年くらい前の曲なんですが、まさに2年前の清水翔太という感じがしますし、清水翔太の王道という感じが自分でもしていますね。だからこの楽曲をどこに入れるか?って2年間ずっと悩んでたんですよ。
- ――綺麗なコントラストができましたね。
- 【清水】 これは応援歌なんですけど、“一緒にがんばろう”というところを表現したかったんです。相手も苦しいことがいっぱいあって周りが真っ暗で、自分も真っ暗で何も見えなくて。そんななかで、お互いに見えないけど存在していることはわかっている。だから励まし合って、ここを抜けだそうと。そういう気持ちで書きました。暗闇の中で叫んでいる応援歌ですね。
- ――“愛された場所へ 還るまで”という表現がありますね。この<愛された場所>とは?
- 【清水】 …そこは非常に質問の多い場所で(笑)。僕は過去をすごく大事に思っているので、振り返ることでいろんなモノを見つけられたり、今を前向きに生きることができたりしていると思うんです。だから、おそらく<愛された場所>というのは、過去を振り返るなかで自分が輝いていた瞬間だと思うんです。その瞬間は人によって違うと思うんですけど、その瞬間の心に戻るということなのかな?
- ――その1行前が<雨の空モノクロの世界>ですから…。
- 【清水】 そういうことですね(笑)!18歳くらいの清水翔太節を訳すなら“モノクロの世界から太陽に彩られた世界へ”ですね(笑)。今の僕から見ると新鮮です。
- ――<僕の声が君に届くなら 壊れるまで歌ってあげるさ>なんて…本当に強い気持ちが伝わってくる歌ですね。
- 【清水】 いやぁ、若々しくてちょっと恥ずかしくなりますね!
- ――(笑)何言ってるんですか、まだ21歳なのに。
- 【清水】 「君が暮らす街」がけっこう熟してる感じじゃないですか。最近の曲の中でも、ちょっと大人びてて。
「Don’t Cry」は若さでしか表現し得ないキラキラした何かがあるので、それは素晴らしいことだと思っています。
(文:三沢千晶)

