ORICON STYLE

2010年03月24日
Salyu、約3年ぶりのオリジナルアルバム『MAIDEN YOYAGE』は、初のセルフプロデュース作品。彼女の本能から放たれる音、言葉、声が、瑞々しく身体中に響き渡る。あなたもアルバムとともに航海しながら、自分自身の“新しいYES”が見つかる!

声の響きだけで描いていく旅の心象風景

── アルバム全体でひとつの物語を形成しているようなイメージもあるし、聴いていると、なんていうか細胞レベルで沸き立ちますね。
【Salyu】 これまでの作品での小林武史さんとのタッグに加えて、よりいろいろな人の音楽スタンスを眺めながら自分のスタンスを見据えていきたいという想いから、この作品に入ったんですよ。その皮切りが「LIBERTY」というシングルで、その後「iris」「コルテオ」「EXTENSION」と続いていくんですけれど、そのときそのときのバイオリズムを大事にしながらも、アルバムとしてひとつのテーマを持ちたいなというのが作り出すときの想いでした。なので、そういうふうに感じていただけたのはうれしいです。あとね、歩いたり車に乗っていたり、移動しながらiPodを聴いて構想を練ることが多かったので、変わっていく景色の中で聴いていて、ふと身体に宿るアルバムになったかな?とは思いますね。
── アルバムタイトルは、訳すと“処女航海”ですけど、女の子が人生を旅しながらいろんな感情と出会っていくようなイメージを抱いていました。
【Salyu】 私のなかでも、トラック1からだんだん旅の支度が始まり、航海に出て、最後に海に出るんじゃないかな?っていうイメージがあって、そのなかで見える心象風景をすごく大切にしたかったんですよ。心の目が見る“何か”を描きたかった。私にとってその“何か”をリアルにしてくれたのが音楽だったから。なかでも海の旅の心象風景という意味では、「VOYAGE CALL」というエンディング曲は、絶対にアルバムにほしいと思って作っていった曲です。響きという原点と向き合いながら、声の響きだけで描いていく旅の心象風景という意味で、自分の想いのなかでは核になっていますね。大事な曲です。
── Salyuさんの“響きの原点”とは?
【Salyu】 私の音楽との出会いは、ピアノと合唱団という場所だったんです。歌は別に歌詞とかじゃなくて、空気と身体の出会いのツールとしての声であるという感覚がすごくあります。ピアノも、アップライトのフタを開けて、下の板もガチャーンって外して、音がバーン!と響くようにして弾いたりしてた(笑)。要するに、何かに響く美しい音がすごく好き。だから響きにすごく執着心が強かったんだと思うんです。そういう出会いをして音楽に目覚めていったので、そこが感性の原点なんですよね。

前作からの3年間のゴール……!?

── 心象風景といえば6曲目の「L.A.F.S.」も、その類ではないかと。
【Salyu】 そうですね。それはアルバム制作のかなり後半に思い立って作った曲なんですよ。アルバムの前半はインパクトのある曲が続いたりするので、変ないい方をすると箸休め的な曲がほしかったんです。でも、もう曲を頼むにもミュージシャンにお願いするにも時間がないし……、ということで自分で作っちゃったんですよ(笑)。でも本当、それはまさに心象風景ですね。胸の中にある言葉にできない場所に、想いがサラッと流れたらいいなぁと思いました。
── そんなアルバムのなかで「新しいYES」という曲の存在とは?
【Salyu】 5曲目に入っていますけど、最初はアルバムの結論として最後のほうに置いてもいいかな?と思っていました。だけど、シングル曲も多い前半にしっかりと落とし込んでいくっていうのが、ポップアルバムのひとつの在り方なのかな?というところに行き着きまして。とりあえずは「新しいYES」が、(前作からの)3年間のゴール……、とまでは言いませんけれど、「LIBERTY」の延長線上にこういう場所があったということです。やっぱり「LIBERTY」がなかったら、「新しいYES」のような小林さんとのコラボレーションも生まれなかったしね。
── 「新しいYES」という言葉には、しっとりとしたキラキラ感、輝きがあるなぁと。
【Salyu】 “新しいYES”って、きっと誰もが人生のなかでいくつか得てきてると思うし、それがあった瞬間ってすごく幸せなんだと思う。だからその記憶が笑うんだと思うんですよ(歌詞より)。だって、人生の中でYESと言いきれることがひとつ増えるってことは、とんでもない人生観の変化で、たとえばNOだったことや何でもないことが、人との出会いや何気ない対話だったり、大好きな人だったり、そういうことによって“これ、いいよね!”って言えるようになる。そんなふうにYESと言いきれてしまう変化って、とてつもない熱量のエモーションというか瞬発力が生まれると思うんですよ。素晴らしいことですよね。

自分のいいところと、意外とダメなところ

── 『MAIDEN VOYAGE』というタイトルに込めた想いは?
【Salyu】 私も3年間を通じて航海をしているなぁと感じたからなんです。いろんなところを漂泊していろんな人と出会って、行き着いたり、またどっか行ってみたり。嵐の日もあればなぎの日もあって、一喜一憂しながらその状況に翻弄されながらも、でも一生懸命、音楽への情熱だけは精神の背骨としながら進んできたなという体感が“VOYAGE”だなと。それで行き着いたのが『MAIDEN VOYAGE』だったんです。 ── 私の処女航海であると。
【Salyu】 そもそも、その想いには2つの気持ちがあって。私としては3年間を通じて、どんな海の状況にも壊れない舟がほしいと思ったの。嵐を乗り越え、天気のいい日はさらにご機嫌にしてくれるような舟……、そういう心を自分のなかに構築すべきだと。このアルバムは、そのスタートラインかなと。あとは自分の感性が感じる時代感。とっくに新世紀になっているんだけど、それを感じることなく希望の羽が無意識のうちに折れてしまっていて。でも、1〜2年前から新しい世紀を感じることができるようになってきたんです。新しい価値観、新しいYES、NOを人々が認め出して対話して、構築し始めて。2010年ってそういう時期だと思ったんです。その2つが、自分のなかですごくリアルだったんですね。だから、これが私の処女航海なんです。 ── Salyuさんが、この航海で見つけたモノは?
【Salyu】 時代との恋愛観って、ポップスにとってすごく大事だということ。どんな時代でも恋愛する。それがポップスの使命だと私は思っていて。そういうことを具現化していく作業だったのかな?セルフプロデュースというなかでは、自分のいいところとか意外とダメなところとか、いろんな発見がありましたよ。4月からのツアーでは、やはり旅をテーマに表現していきたいですね。そしてホールだから楽しめるような、ダイナミックでドラマティックなライブをしたいと思っています。

(文:三沢千晶)

MAIDEN VOYAGE【初回限定盤】
Salyu
発売日:2010/03/24[アルバム] 価格:\3,990(税込)
トイズファクトリー 品番:TFCC-86323

MAIDEN VOYAGE【通常盤】
Salyu
発売日:2010/03/24[アルバム] 価格:\3,000(税込)
トイズファクトリー 品番:TFCC-86324

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2000年4月、Lily Chou-Chouとして2枚のシングルをリリース。2001年10月に彼女の歌が全編にフィーチャーされた映画『リリイ・シュシュのすべて』(岩井俊二監督)が公開され、そのオリジナルアルバムとして『呼吸』をリリース。
2004年、シングル「VALON」でのコラボレーション、Ilmari×Salyuを経て、6月にシングル「VALON-1」でSalyuとしてデビュー。
2007年1月17日、2ndアルバム『TERMINAL』をリリースし、2位を獲得。
2008年11月26日、ベストアルバム『Merkmal』をリリースし、13位を獲得。
2009年2月11日、シングル「コルテオ〜行列〜/HALFWAY」をリリース。
2009年8月19日、シングル「EXTENSION」をリリース。
2010年3月10日、シングル「新しいYES」をリリース。
2010年3月24日、アルバム『MAIDEN VOYAGE』をリリース。


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