ORICON STYLE

2009年08月19日
Salyu Special Interview
充実した気持ちのなかから生まれた“背伸び讃歌”
2月にダブルA面シングル「コルテオ〜行列〜/HALFWAY」をリリースし、初の日本武道館ワンマン、そして全国ツアーと、2009年を駆け抜けているSalyu。ニューシングル「EXTENSION」は、現在の彼女のバイオリズムから生まれた“背伸び讃歌”だという。そこに込められた想いを聞いた。

――「EXTENSION」は、“背伸び讃歌”と語っていらっしゃいましたね。
【Salyu】
 ハイ。この曲が自分の今のテンションにすごく合っていたので、シングルとして発売させていただきました。なぜ合っていたかというと、この春のベストアルバムのツアーを、初めてプロデュースさせていただいたんですよ。それは、1990年代の初めに小林武史さんに出会ってから今までの作品を収めた集大成のアルバムだったので、スピリットもフックも、ポップもコアも、自分が一番美しく伝わりやすくコーディネイトできるという前向きな言葉をもらってやっていったんです。すごく手応えもあって、自分なりにも10年間を実感しながら、今まで力をいただいた方々への感謝の気持ちや、楽曲との出会いの喜びさえも感じ、有意義な時間を過ごしたんです。それが終わって、音楽へのモチベーションも確かな想いで高まっていって、音楽への好奇心もいよいよ強固なものになっていたんですよね。ベストアルバム、そしてツアーは、私にとって終止符でありスタートであり、そこからの第1歩が今回のシングルなんです。

――だからこそ今のSalyuさんを忠実に表現できる曲が必要であったと。
【Salyu】
 そうなんです。今の私は素直な想いとともに、生命力がすごくアップしていて(笑)、何かの価値を変えてみたいとか、ドラスティックな精神にもなっていたんですね。「EXTENSION」の歌詞の内容というのは、ひとつ“背伸び”というキーワードがあって。背伸びって一般的には、あまりポジティブな言葉として捉えられていないけれども、私にとってはすごく リアリティがあって共感できる言葉だったんですよ。だから、背伸びという言葉をポジティブにユニークに変換できたらなと思いました。

――この歌のなかにある“背伸び”は、すごく一途で初々しいイメージですね。好きな人に近づきたい気持ちが健気に表現されていますけど、聴いていると、子供の頃に母親たちの会話に入りたくて、大人のフリをしたときのことを思い出したりしました。
【Salyu】
 恋愛のみならず、家族や友だちに対してもそういう気持ちはあるでしょうし、コミュニケーションの場における普遍性だなと思うんですね。少なくともこの10年間、背伸びということによって、すごく自分が成長してこれたんじゃないかな?って思っているんです。

気取っているのって、最高だし楽しい

――仕事の場面でもありますよね。
【Salyu】
 仕事の場面での背伸びは、ときに信頼を失うこともあるんですけど(苦笑)。無理かもしれないことに対して“できます!”ということによって、そこに手が届くための努力をするわけじゃないですか。落ち込んだ自分を隠すために気取ってみたりもするし、そういうがんばりが人を成長させると思うんです。それとね、背伸びという言葉に好感を持つとともに、ナチュラルな自分とか、いつも自分らしく・・・といった言葉に対して嫌悪感を抱くようにもなっていて。

――自分らしさという決めつけへの嫌悪ですね。
【Salyu】
 自分らしいものとか個性を探さなきゃいけないような時代になっていますよね。揺るがない自分を持っているのがカッコいいという背景があったとして、私はそれにあまりリアリティを感じていなくて。設定してしまうともったいないと思うんです。人間って、どんどん変わっていって当たり前なんだから、自分らしさを認識しなくても、一瞬一瞬に放っている瞬発力こそが自分らしさなんじゃないかなと。音楽だって、自分らしさを考えれば考えるほど煮詰まったりするし、バンドとのセッションだったり、一緒にやっている人たちとの縁だったり、周りにいかに耳を澄ませられるか?ということだと思うんです。

――それにしても、<今は背伸びしているフェイクな私だけど、いつかは愛しいあなたと等身大になる・・・>って、めちゃくちゃかわいい歌ですよね。
【Salyu】
 切実なテーマだからこそ、かわいさとか健気さって大切だったので、フェミニズムというものをすごく意識していたんですよ。おそらく、理屈ではないというのが大事だったんですよね。感覚で喋っちゃうとか、抽象的な表現って女の子特有ですよね。きっと男の人には理解できない(笑)。最近、そういう気分に忠実な女性的な部分を見つめ直しているところがあります。

――最近、背伸びしていること、あります?
【Salyu】
 常にしていますよ。今もハイヒール履いているし(笑)。ハイヒール履いているとテンション上がりますよね。気取っているのって、超最高だし楽しくなる。気取りってけっこう大事だなと考えている今日この頃です。

人生に切実に取り組むことの大切さを感じている

――2曲目の「アイ(I)」は、Salyuさんが作曲に参加していますね。
【Salyu】
 「EXTENSION」も書いている国府達矢くんと(編曲の)渡辺善太郎さんとの3人のタッグは3年くらい前からですが、「アイ(I)」は一緒に作り始めてから2曲目くらいの曲で、ジャムセッション的に作ったんですよ。私にとってすごく大事な曲で、切なさとか甘さみたいな何かをサウンドに潜めているんですよね。スピリットを表現するのに、重く深く伝えることができる曲だと思いました。そしてすごくイノセントで、自分と共振するんですよね。身体のなかにある宇宙の広さみたいなものを、オルタナティブでスペイシーなサウンドで表現できたらなと。

――“アイ”とは“私”のことですよね?
【Salyu】
 アイは、“I”と“LOVE”(愛)、両方の意味があるんです。過去も現在、きっと未来も、すべて誇りに思える自分というものを、ここに記そうという想いがあります。さっきバイオリズムという話をしましたけど、そんな自分のDNAを肯定していく歌を作れたんじゃないかな。

――そして「ROSE」はアコースティック・ギターに英詞が乗っていますね。
【Salyu】
 これは、映画のような曲を作ってみたいなというところから始まっていて。ジム・ジャームッシュのロードムービー的な、聴いているだけで旅を体感しているような曲を作りたかったんです。あとは「HALFWAY」を歌ってから、フォーキーな曲がもうちょっとほしいな!と思ったというのもあります。まどろみみたいな、甘い世界観を作れたらなぁと。今回のシングルは、アルバムくらいの盛りだくさんなものにしたかったんです。今年、アルバムへの新しいタームが始まる1歩目として、どんな自分のインナーを示すべきか?ってことがすごく大事で。それはまた、人生に切実に取り組むことの大切さを感じているからこそ出てきている想いだと思うんですよね。

(文:三沢千晶)

EXTENSION【初回限定盤】
Salyu
2009/08/19[シングル]
価格:\1,050(税込)
トイズファクトリー
品番:TFCC-89283
CDを購入する(Amazon)このCDについて語ろう

EXTENSION【通常盤】
Salyu
2009/08/19[シングル]
価格:\1,050(税込)
トイズファクトリー
品番:TFCC-89284
CDを購入する(Amazon)

Profile

2000年4月、Lily Chou-Chouとして2枚のシングルをリリース。2001年10月に彼女の歌が全編にフィーチャーされた映画『リリイ・シュシュのすべて』(岩井俊二監督)が公開され、そのオリジナルアルバムとして『呼吸』をリリース。
2004年、シングル「VALON」でのコラボレーション、Ilmari×Salyuを経て、6月にシングル「VALON-1」でSalyuとしてデビュー。

2005年6月15日、1stアルバム『landmark』をリリースし、22位を獲得。
2007年10月17日、シングル「LIBERTY」をリリースし、14位を獲得。
2006年9月6日、シングル「name」をリリースし、15位を獲得。
2006年11月1日、シングル「プラットホーム」をリリースし、16位を獲得。
2007年1月17日、2ndアルバム『TERMINAL』をリリースし、2位を獲得。初のTOP3入り。
2008年11月26日、ベストアルバム『Merkmal』をリリースし、13位を獲得。
2009年2月11日、シングル「コルテオ〜行列〜/HALFWAY」をリリース。
2009年8月19日、シングル「EXTENSION」をリリース。

■Beauty Styleインタビュー(2009/08/11)
『好きな人の前では“背伸び”して、少し大人の私を見てほしい』

■『ap bank fes ’09』ライブレポート
 『音楽のエネルギーにつま恋が揺れた!感動と笑顔の3日間』(2009/07/31)

■シングル「コルテオ〜行列〜/HALFWAY」インタビュー
 『いろんな感情が入った熱量の高い歌!!』(2009/02/10)

→その他特集&インタビュー 一覧はこちら

▲このページの最初に戻る

PV「おしゃれ番長 feat.ソイソース」 PV「瞳の先に」