ORICON STYLE

2008年10月01日
小林武史 SPECIAL INTERVIEW
“環境”のことを知った上で、次にどう行動するか
小林武史の写真

――今年の夏は各地でゲリラ豪雨などが起こって、なんだか予測できない不安定な天候でした。これはもしかして地球温暖化の影響かな?!などと思っている人も多いですよね。
【小林】 一概には言えないし、どんな科学者でも断定はできないだろうけど、自然環境が極端な方向に変化しているっていうのは、やっぱり何かが影響しているんじゃないかと思ってしまうだろうし、都市部でゲリラ豪雨が多発しているのは、エアコンの使い過ぎなんじゃないかとか、みんな原因を特定したがる傾向はあるよね。

――5年前に小林さんと櫻井さん(Mr.Children 桜井和寿)が中心になって『ap bank』を設立した頃と比べると、明らかに地球環境やエコに対する関心が高まっています。
【小林】 確かに“エコ・ブーム”“環境ブーム”みたいな流れもあって、関心は高まっているでしょうね。その一方で関心を全く持っていない人、興味がない人もいて、僕はその人たちに対して、それはダメだというつもりはないし、言う権利もない。人それぞれでいいんですよ。ただ、『ap bank』や『ap bank fes』をきっかけにして、環境やエコに興味を持ってくれた人は、5年前より確実に増えていると思うんです。すでにみんな“環境のことを知る”っていうところにはきちゃっていて、「さぁ、そこからどうする」「どう行動するか」っていう段階にきている。もう“省エネのためにちょっと何かを始めてみよう”とか“自分のできる事でいいからやろう”っていう段階じゃなくなっている。もちろん、何にせよやらないよりはマシなんだけれど、ね。

僕らがいる世界や地球を少しでも感じてもらえたら嬉しい
小林武史の写真

――では、何をすればいいんでしょう。
【小林】 たとえば、以前、僕が車じゃなくて自転車に乗って移動していたのは、環境にいいからということよりも、もっと本質的なところでそれが好きだったからだったし、運動にもなるし。それこそ風を感じるのが気持ちいいとか、車に乗っていたら見えなかった風景に触れられるのが楽しかったからで・・・。有機野菜を食べている人だってね、きっとその野菜がおいしいから食べているんだろうし、肌がきれいになったとか、体調が良くなったとか、そういうインセンティブを感じながら、自分にとって気持ちいいか、とかプラスになるかどうかってところがいちばん大事なものになってきている。義務感や我慢からではなく、自分が興味のあるもの、興味を持てるものを環境にもいい方向にシフトしていけるかどうかという。あと、今、僕がテーマとして考えているのは、日本の食料の自給率がこれだけ低くなっている中で、改めて農業に目を向ける時期なんじゃないか、と。農業は自然を相手にして、勘を働かせて、ビジネスのことも考えながら、なおかつ未来のことにも目を向けることが求められる、とてもクリエイティブな職業だと思う。それに、例えば農作業をしてる筋肉ムキムキの男の子って、魅力的でカッコイイじゃない(笑)?そんな男の子を女の子は嫌いじゃないと思うんだけど(笑)?そんな新しい感覚で農業をもう一度捉え直す人たちが増えたら、日本の農業って変わるんじゃないかな。

――興味を持つことが新しい可能性を生み出していく。
【小林】 そういうことが、どんどんこれからは大事になってくるんでしょうね。僕は“ネオコラージュ”って呼んでいるんだけど、異質なもの同士やあまり食い合わせがよくないもの、でも、もともとどこかで繋がっている部分を見出して、繋ぎ合わせたり、並べ替えたりして化学反応を起こしていく・・・。“コラージュ”して一つにまとめるだけでなく、そこから生まれたものが、さらに次のフェーズを作り出すこと。それは『ap bank』だったり、『ap bank fes』だったり、Mr.Childrenの音楽の太い柱として、これからも続けていこうと思っています。

――書籍『環境と欲望 -東京環境会議-』で小林さんが伝えたかったことは何でしょう?
【小林】 『AP BANG! 東京環境会議』に集まったクリエイターやアーティストや有識者たちの考えをひとつに集めて見せたのがこの本だと思うんです。この本は頭から読まなくちゃいけないことはなくて、どこから読んでもいいという気軽さがある。本って寝っ転がっていても読めるし、そういう手に取りやすい、読みやすい本が何かを考える1つの始まりになればいいんじゃないかと思っているんですよ。今僕らがいる世界や地球を少しでも感じてもらえたら嬉しいですね。

(文:松浦靖恵)
(写真:草刈雅之)
RELEASE

環境と欲望 ―東京環境会議―
小林武史+AP BANG!編/ポプラ社刊
発売日:2008/07/09 価格:\1,575(税込)

CDを購入する(Amazon)

WORKS I
小林武史
発売日:2008/11/26 [アルバム] 価格:\1,260(税込)
トイズファクトリー 品番:TFCC-86280

ABOUT 東京環境会議 小林武史の写真

“ap bank fes”から更に一歩進んだイベントの在りかたの提案。
ライブ、DJ 、映像、アート、様々なジャンルのクリエーターが新たな“エコレゾナンス”を発生させるべく集結。
東京・新木場の大型イベント・スペース『STUDIO COAST/ageHa』を舞台に夕方〜深夜までのフルオールタイムでパフォーマンスを行う、実に3日間に渡るレゾナンス・イベント。
夏のap fesで伝説的なパフォーマンスを繰り広げた“Bank Band”に代わり、全く新たなメンバーによる新バンドが結成され、シンガー、ラッパーをゲストに迎えライブを行う他、各イベントではレジデントクラスの DJによるクラブプレイ、雑多かつハプニングの要素を多大に含んだ初期のクラブカルチャーを彷彿とさせるパフォーマンスを展開する。

PROFILE

1959年6月7日生まれ。
音楽プロデューサー、作詞、作曲、編曲、ミュージシャン(キーボーディスト)。
Mr.Childrenをはじめ、サザンオールスターズ、大貫妙子、井上陽水等、日本を代表する数多くのアーティストのレコーディング、プロデュースを手がける。
2003年、櫻井和寿と中間法人『ap bank』を立ち上げ、環境NPOに対する融資のほか、初の環境野外フェス“ap bank fes”を2005年から開催。同年、環境と消費を考える場として“kurkku project(クルック プロジェクト)”を設立。