ミュージック インタビュー&コメント

ミュージックインタビュー&コメント
2006年05月10日

元ちとせ SPECIAL INTERVIEW

命とか平和に、もっと目を向け始めたらいいな

──今回のアルバム制作には、どんな想いで臨んだんですか?
【元ちとせ】 以前は、何かテーマを持ってアルバムを作ることはなかったんですけど。ただ、これまでも“命があるからこそ”っていう想いはいつも持ってたし。あと、発展とかっていうことより“そのまま”とか“そのものすべて”でいることっていうのが、生きてく上での自分自身のテーマとしてずっとあったんです。それは多分、奄美大島という育ってきた環境が、私に教えてくれたことだと思います。で、今回あらためて、自分には歌を歌う場所があって、歌っていく役目があるんだなって思った時に・・・。なんていうか、命とか平和っていう意識に、皆さんももっと目を向け始めたらいいな、そのための手助けができたらいいなって思ったんです。それと、進歩によって人が忘れてしまったシンプルさをもう1回見直したら、きっとすごく良い発見があるんじゃないかなっていう気がして。ほら、人はいつも先のことばっかり探そうとするから、結局、同じところを回ってしまうんだろうし。それよりも、本当はその場で足踏みして、すぐ後を振り返ったりすることも、実は平和に繋がる凄く大切なことなんじゃないかなって思ったんです。


──タイトルの“ハナダイロ”は、漢字で書くと“縹色”。空や海や地球の青さを意味する色だそうですね。
【元ちとせ】 私も収録曲の中にある「はなだいろ」っていう曲で、初めて知った言葉なんですけど。厳密にいえば、空の青さも海の青さも、本当はそれぞれ違った青さじゃないですか。でも、地球の青いイメージを作ってるのは、やっぱり空と海だろうし、そういう青さが平和をイメージさせる気がして・・・。その曲自体がアルバムを象徴してるわけではないんですけど、この言葉の意味が今回の自分の想いにピッタリだったので、アルバムタイトルにしたんです。


“元ちとせ”っていう存在が、ようやくガッツリ見えてきた

──ある意味、非常にメッセージ性の強いアルバムだと思うんですが、楽曲や歌の表現はけっして声高になることなく、むしろとてもたおやかな表現を見せてますよね。
【元ちとせ】 今回のアルバムは上からモノを言うように表現したら、きっと人の心に伝わらない内容だと思うんです。中にはクローン羊のこととか、ボーナストラックの「死んだ女の子」で歌ってる原爆のこととか、凄く恐い現実を伝えてる曲もあるし・・・。だから、けっして押しつけるようなものにはせずに、皆さんの心の中で“こういう言葉が昔あったね”とか“こんなメロディーが昔あったね”っていう風に、いつかどこかで、その蓋が開かれる時があるようなものにしたいなって思ったんです。


──歌い方も、これまでに比べて、どこか柔らかくなってるような気がしたんですが。
【元ちとせ】 そうですね。でも柔らかい部分って、もともと持ってた要素でもあったと思うんです。今までの楽曲では、表に出すことができなかっただけでね。そういうことも含めて、自分自身、アルバムを重ねることで色々見えてきたこともありますし・・・。実は私の中では、ここまでの3作が3部作だって思ってるんです。生まれてきて、歌に出会って、結婚、出産によって自分にとっての新たな家族というものに出会って、また歌に戻ってきた。そのひとつの旅がここで終わるような気がするんです。今回のアルバムには、これまで私が音楽を通じて感じたり考えたものを凄く織り込むことができたし。それによって、輪郭が薄〜くてぼんやりしてた“元ちとせ”っていう存在が、この3作目にしてようやく、ガッツリ見えてきたんじゃないかなって思うんです。

(文:村野弘正)
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