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石原さとみ『セクシー評価の本質 艶めかしく映る無防備さ』
身構えずに素の自分をさらけ出した新人時代
新人時代の彼女について、印象的なことがいくつかある。初めて取材したとき、資料としてスカウトキャラバン決選大会のパンフレットを持って行ったら、当時の髪が長かった自分の写真を「見ちゃダメです!」と、恥ずかしがって両手で隠された。写真集を出して初めて握手会イベントを行った際は、報道陣が待機していた後ろの入口から姿を現すや、会場に集まっていた多くのファンを見て「うわーっ!」と無造作に声を上げる。新人らしい初々しいリアクション……と思った。
彼女はその後もドラマ『ウォーターボーイズ2』(2004年 フジテレビ系)や『H2〜君といた日々』(2005年 TBS系)のヒロイン役などで順調にキャリアを重ねていく。新人と呼ばれる時代は過ぎ、『花嫁とパパ』(2007年 フジテレビ系)に主演した頃は20歳になっていたが、本気で照れたり、本気で嬉しそうな顔をするのは、新人時代から変わらなかった。昔は初々しかったというより、彼女にはどこか無防備なところがあったようだ。若手トップ女優になっても身構えてバリアを張ることをせず、ときに素の自分をあっけらかんと見せていて。
その無防備さは外見的には、チャームポイントとされる唇に漂っていた。10代の頃から聡明な雰囲気の少女だったが、少し開けたふっくらした唇だけが生身でさらされている感じがして、ドキッとすることがあった。
清純な雰囲気と生身の大人の女性のアンバランスさ
彼女の本質は10代の頃から変わっていない気がする。今でも清純派ど真ん中で、路線変更はしていないはず。確かにフェミニンな部分にドキドキさせられるようにはなったが、脱いだわけでも肌露出がとくに増えたわけでもない。ドキドキ要因は「セクシー」や「色気」というより、やはり10代の頃と同じく「無防備」といったほうがしっくりくる。
今の彼女への評価は主に、サントリー『ふんわり鏡月』のCMやドラマ『失恋ショコラティエ』(2014年 フジテレビ系)から生まれたもの。『ふんわり鏡月』の「間接キッス、してみ?」。「間接キッス」なんて言葉を聴いたのも久しぶりだが、飾らないGパンの彼女に縁側でポロッと言われたら、意表を突かれたぶん、ズキンとくる。浴衣での「うなじ見てたでしょ?」も見透かされていたのが気恥ずかしいが、普通に言われると妙に生々しい。
『失恋ショコラティエ』で演じた紗絵子は“天然系小悪魔女子”との設定だったが、“小悪魔”ではなかったと思う。計算して男をたぶらかすのではなく、ただ感情の赴くまま動いて、その愛らしさに周りの男が勝手に振り回されるだけ。本人の精神性は純粋すぎるぐらい無垢というか。そして、たぶん『ふんわり鏡月』の彼女も、多少の酔いも入って思ったままを口にしているだけ。何の思惑もなく。それが勝手に艶めかしく映る。
この役が石原さとみにハマったのは、彼女の無防備なところとシンクロしたから。27歳の彼女は相変わらず可愛らしいが、もう大人の女性だ。なのに今でも子どものように、自分をそのまま露わにしている感じがする。ふるまい自体は清純派。けど、同じ素を見せるのでも、大人の肌と匂いと仕草で寄ってこられたら、生身が逆に艶めかしい。
そして、やはり唇。『失恋ショコラティエ』では彼女がチョコレートを食べるシーンがたびたびアップで出てきた。人間誰でも、ものを食べているときは無防備になるが、もともと無防備な石原さとみの唇がさらに無防備に動くのは色っぽかった。
10代の頃と変わらぬ清純な雰囲気と、大人の女性に成長した生身の姿。今の石原さとみにドキドキさせられるのは、そのアンバランスさが妖しいからではないだろうか。おそらく本人は何も意識してなさそうなところが、余計に人を惹きつける。
(文:斉藤貴志)
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