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韓国映画特集『2014年上半期の韓国映画シーンと制作現場のウラ事情!社会学的に切り込む』

今や映画ファン層全体から熱い視線を集める韓国映画。この夏〜秋も多くの話題作が日本公開されるなか、韓国映画界の2014年上半期の動向を掘り下げる。『怪しい彼女』のファン・ドンヒョク監督に韓国映画界の裏側と監督業の実態を聞いた。さらに日本映画大学のハン・トンヒョン准教授に、韓国社会と今の韓国映画の傾向、それを生む社会学的な背景を語ってもらった。韓国映画と韓国社会にエンターテインメントの側面から切り込む。

[対談2]◆韓国の若い人たちの嗜好の変化 繊細で優しい映画へ?

【西森】 韓国映画って、観客動員数がここ数年はすごく多くなっていますよね。年間で1000万人を動員する映画が何本も出たりしていて。以前は落ち込んでいた時期もあったと思うんですが。
【韓東賢】 さっきも言いましたが、おおまかな傾向として、2000年頃の『シュリ』『JSA』からしばらくは、ブロックバスター的な大作指向がありました。それとは別に、キム・ギドク監督やホン・サンス監督が撮るようなインディーズの小規模の作品はあったけど、中間が少なかったという印象はありますね。

【西森】 それを考えると、今、500万人ヒットの中くらいの作品が出てきたからこそ、韓国映画界が活気を戻したという気もしますね。『新しき世界』が470万人、『悪いやつら』が470万人、『監視者たち』が500万人、『サスペクト』が400万人、『テロ,ライブ』が550万人です。なかには、大作っぽい作りのものもありますが。
【韓東賢】 それと、私は映画を教えているわけではないのですが、日本映画大学で教員をしていて、本学では昨年度から韓国芸術綜合学校の映画学部と合作で映画を撮るプロジェクトを始めました。この過程で、やっぱり韓国では映画産業にお金がかけられているというのは実感しますね。韓国芸術綜合学校は、日本で言えば東京藝大でしょうか。政府の文化体育観光部直轄で、映画学部からは最近でいうと、『チェイサー』や『哀しき獣』を手がけたナ・ホンジン監督を輩出しています。映画学部の学部長は『チルスとマンス』などで知られるパク・クァンス監督で、合作の撮影中などによく話をしましたが、やっぱり資金があるし、映画の規模もデカいですね。それと同時に映画監督の社会的地位も高いです。

【西森】 それは、今回インタビューした『怪しい彼女』のファン・ドンヒョク監督も言われていました。韓国って、たたき上げの監督ってキム・ギドク監督くらいしかいないイメージですよね。
【韓東賢】 韓国の監督は、大学で専門的に学んだ人が多いですからね。今後、キム・ギドク監督以外にももっとインディペンデントな人が出てきたらまたおもしろいのだろうとも思いますけど。

【西森】 ハンさんの大学でも、韓国からの留学生もいるんですよね。日本映画について、どんな風に思っているんでしょうか?
【韓東賢】 それがおもしろくて、日本に映画の勉強に来るような学生は、韓国のブロックバスター作品が嫌いって言うんですよ。逆に、日本的な、繊細な心の動きを描いたような映画が好きと。岩井俊二監督が好きだという学生や受験生も多いですね。

【西森】 村上春樹氏の本を読んでいそうな感じですね。実際、韓国の俳優さんも、芸術を学んでいるような人は、みんな「日本の映画は、なんでもないようなことを繊細に描くのがうまい」って言いますね。
【韓東賢】 だから、韓国の若い人たちは、繊細で雰囲気のある優しい映画を作りたいって言いますね。そういう意識も広がってきているのではないかと思います。何も起こらず心の機微が描かれた作品が、より洗練されてかつ先端であるという。

【西森】 そういう作品は日本的だと思われているわけですよね。最近は、韓国でもそういうなんでもない日常の世界を描いた韓国映画もありますが、なかなか成功しているとは言い難そうですが。
【韓東賢】 お互いにないものねだりなんですかね。昨年の日韓合作プロジェクトでラインプロデューサーをお願いした卒業生は、日本映画が好きで本学に留学した韓国人なのですが、新作の予告編を観たら繊細な雰囲気の作品のようだったので、ぜひ観てみたいと思っています。

>>次のページへ [対談3]社会問題の娯楽化に加わった、個人的な物語の要素

<<目次リンク>>
・特集本文 [1] [2] [3]
・ファン・ドンヒョク監督インタビュー [1] [2] [3]
・ハン・トンヒョン准教授 対談  [1] [2] [3]
・レビュー&予告編 [1]

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