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永遠の0『奇跡の作業を目撃!! 超大作誕生の舞台裏―山崎貴監督インタビューも』

観客動員数700万人を超え、興行収入87億円を突破した、記録と記憶に残る大ヒット映画『永遠の0』。いよいよ待望のBlu-ray&DVDが発売されるが、日本映画界のヒットメイカー山崎貴監督に今だから話せるウラ話を聞きながら、幅広い世代に愛された同作の魅力を改めて紐解く! 驚きのAR(拡張現実)特典についても明かしてくれた!!

商業活動から外れてでもやらなければいけない仕事

――邦画の実写作品の低迷ぶりが目立った今年度上半期に、観客動員8週連続第1位など、過去10年間の興行記録を塗り替える大ヒットになりました。
山崎今だから言えることですが、リアルな話、ヒットは難しいと思っていました。企画を立ち上げる段階で、最近の戦争映画を調べてみると、興収15億円がMAX。逆算するとDVDの収益を見込んでも、製作費に5億円以上はかけられない。でもそれじゃとても足りない(苦笑)。いつもは「自分がやりたい仕事をやる」だけではなく「お客さんの求める作品=ヒットを目指す」ことを意識して仕事をしていますが、『永遠の0』に関しては、今までの自分のポリシーに反しても、多少周囲に金銭的な迷惑をかけることになっても、絶対に作るべき映画だと思っていました。

 故・黒澤明監督が『生きものの記録』を撮ったときに、「たまには閻魔様の前で、僕たちはこういうものを作ってきました、と言えるものを作らなきゃまずいんだよ」とおっしゃったそうです。そこまで大仰な話ではないけれど、この映画は、僕にとってのメセナ事業というのか(笑)。つまり従来の商業活動からはちょっと外れた、映画監督としてやらなければいけない仕事のような気がしていました。

――映画監督として、いつか戦争映画を撮りたいという思いを長年抱いていたそうですね?
山崎声高に反戦の思いで、というわけではないんですよ。もちろん戦争なんてあってはいけないと思っていますが、過去に戦争があったという事実はきちんと伝えなきゃいけないんじゃないかと。日本の戦争映画って、上層部の人がいかに悩み、決断したかを描く、偉い人たちの物語が多い。でも実際に戦地で戦っていたのは市井の人々で、20歳そこそこの若い人たちがいちばんの犠牲となった。彼らがどんな思いで戦場へ行ったのか? ちゃんと知らなきゃいけないことのひとつだと思ってきました。

 同時に、いい悪いは別にして、日本という国にとって第二次世界大戦は、今もなお日常に影響を及ぼす、重大な出来事だという気がしていました。この国で映画監督をやっていく以上は、一度は戦争映画を撮ってみたいと考えていた頃に、ちょうど百田尚樹さんの原作と出会って。現代の若者(健太郎)に伝えていく(原作の)語り口がすごくよくて、すぐに「やらせてください!」と言いました。

賛否両論も…強権を発動して撮った大事なシーン

――今改めて、この映画を作った意義についてはどう考えていますか?
山崎この映画を作るにあたって、当時、特攻にいた方たちにお話を聞かせていただきました。90歳代とはとても思えない、元気な方でしたが、リアルな体験を持つ人たちから直接話を聞いたり、映画館で映画を観てもらえる、ギリギリのタイミング、最後のチャンスだったのではないかと思っています。(制作当時の)実感としては、語り継ぐというより、いろいろな巡り合わせも含め「やれ!」と言われているような使命感の方が強かったのですが(笑)。

 映画化する上では、説教にならないようにしたいという思いが強くありました。どうしても戦争を描くとなると、立派なものにしなきゃいけないという部分がありますが、血の通った、ひとりの人間が辿った物語にしたかった。偉い人の話を聞かされるのではなくて、お客さんみんなが興味の持てる、その先を知りたいと思える仕掛けをしっかり作って、最後に、健太郎と同じ思いを共有できたらいいなって。祖父・宮部久蔵の足跡を辿りながら、心の旅をする健太郎と一緒に、お客さんにもプロセスにこそ意味があることをちゃんと体験してほしかったし、そのなかで少しずつ明らかになっていく宮部さんの存在が、いろいろな人の心に像を結んでくれたらと思っていました。

――公開後、さまざまな反響が届いたかと思いますが、とくに印象に残った感想を教えてください。
山崎いちばんショックだったのは、最後に歩道橋の上を零戦が飛んでくるシーンで、宮部はスクリーンのこちら側にいる私たちに、未来を託すという意味で敬礼してくれたんじゃないかという人がいて。自分では(宮部と)孫の健太郎との出会いのつもりだったので、全く意図していなかったことだけど、言われてみればそうだなって。後づけになりますが、宮部が健太郎にも、僕らにも敬礼しているように見えて、ジンときました。実は、あそこでいきなりファンタジーというか、心象風景的な描写になるので、現場で賛否両論あり、紛糾したシーンだったんです。でも自分の中では絶対にやりたかった、すごく大事にしていたシーンだったので、強権を発動して撮りました(笑)。

――時空を越えた世界へと観る者をぐいぐいと引き込む、山崎映画の真骨頂でした! 本作を含め、ハリウッドからも注目されるVFXの名手として、過去に未来に、観客をタイムトラベルさせてきた山崎監督ですが、日本人の美点についてはどんなふうに捉えていますか?
山崎人の足を引っ張るのが大好きだったり、何でも平均化しようとしたり、嫌いなところもいっぱいありますが、年を重ねて、だんだんかわいらしい種族だなって思うようになってきました(笑)。戦後教育で「日本人はダメだ」と刷り込まれた世代ということもあり、“そこまでダメじゃないぞ!”っていうことを、もっとちゃんと発信していきたい気持ちも少しあります。根が真面目なので、長年ダメだと言われ続けて、自信を失くしてしまっている部分もあるけれど、W杯サッカーのゴミ拾いとか、世界中から賞賛されるところもいろいろとある。でもすぐ調子に乗っちゃうから、自分も含めて、そんな国民性をうまく飼いならしていくしかないなって(笑)。
(文:石村加奈)

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「魅力を紐解く!超大作の意外な意外な舞台裏!?」

永遠の0

 司法試験に落ちて進路に迷う佐伯健太郎は、祖母・松乃の葬儀の日に驚くべき事実を知らされる。実は自分と祖父・賢一郎には血のつながりが無く、“血縁上の祖父”が別にいるというのだ。本当の祖父の名は、宮部久蔵。60年前の太平洋戦争で零戦パイロットとして戦い、終戦直前に特攻出撃により帰らぬ人となっていた。
 宮部の事を調べるために、かつての戦友のもとを訪ね歩く健太郎。しかし、そこで耳にした宮部の人物評は「海軍一の臆病者」などの酷い内容だった。宮部は天才的な操縦技術を持ちながら、敵を撃破することよりも「生きて還る」ことに執着し、乱戦になると真っ先に離脱したという。
 「家族のもとへ、必ず還ってくる」……それは宮部が妻・松乃に誓った、たったひとつの約束だった。そんな男がなぜ特攻を選んだのか。やがて宮部の最期を知る人物に辿りついた健太郎は、衝撃の真実を知ることに……。宮部が命がけで遺したメッセージとは何か。そして現代に生きる健太郎は、その思いを受け取ることができるのか。

原作:百田尚樹
監督・VFX:山崎貴
出演:岡田准一 三浦春馬 井上真央 ほか
【公式サイト】

Blu-ray&DVD 7月23日(水)発売
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(C)2013「永遠の0」製作委員会

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