
――ニューヨークは、以前にも訪れたことがあるんですか?
【長渕】 今回の撮影で3回目なんですけど、前に行ったのは幼少の頃だったので、物心ついて自分で考えながら歩いたのは初めてです。すごく楽しかったです。
――プライベートも満喫しましたか?
【長渕】 撮影は2週間だったんですけど、そのあと10日間オフをいただいて。しっかりと満喫して帰ってきました(笑)。
――ドラマを観て、もっとも強く感じたのは、世代をつなぐドラマだなと。
【長渕】 主に50〜60年代の“ビート・ジェネレーション”に影響を受けた方々に共感される内容ですよね。でも若い人たちも共感できる部分もあるし、ビート文学を通じて家族の問題も解決していくようなニュアンスもあるので、家族の絆や愛を感じて、観たあとにホッとするんじゃないかな?と思いますし、また“一歩踏み出したいな”という気持ちにさせるようなドラマなんじゃないかな?と私は思うんです。
――そうですね。“もっと自由に生きていいんじゃない?”という提案をしてくれているように感じました。
【長渕】 私は今、大学4年生で、友だちは今ちょうど就職活動中なんですよ。そのなかで、途中で夢をあきらめちゃう子もいるんですよね。そういう身近なところでも“もっとがんばって夢を追い続けて!”というメッセージを伝えたいという想いもあるんです。
――文音さん自身は、その時代の音楽を知っていましたか?
【長渕】 ボブ・ディランは知っていましたけれど、あとは知らなかったですね。実は、佐野元春さんの音楽も、このドラマに関わるまで知らなかったんです。
――どんな感想を持ちましたか?
【長渕】 完成した映像を観るまでは、ニューヨークやブラジルの風景に日本語の音楽が入ってきたらどうなるんだろうな?って、すごく不思議に思っていたんですよ。でも映像を観ると、佐野さんの音楽がすごくマッチしたんですよね。違和感もなく、すごく溶け込んでいて。というのは、佐野さんもやはりビートに影響された世代のひとりなんだということなんですよね。それで佐野さんの音楽が生まれ、堤 幸彦監督は佐野さんの歌に感化されてロックの世代を生き抜いたとおっしゃっていましたし、結局つながっているんですよね。感動しました。
――文音さんが演じたデイジーという女の子は、すごく自由で前向きでしたね。ハル(林遣都)をかなり振り回している印象でした(笑)。
【長渕】 我が道を行っていましたね(笑)。でも、すごく強いし、自分の意志を貫く女の子だろうなと思う反面、両親が若くして死んでしまったという悲しみを心のなかに持ちながら生きている女の子なんですよね。それがハルを信頼した瞬間に、弱さをホロっと見せてしまったりして。本当は、しっかりしていて強い人ほど内面はすごく弱かったり、心に深い傷を負っているんじゃないかな?って思うんです。それを表に出さずにがんばっているデイジーはすごくいい女だなぁと思いました。
――文音さんと似ている部分はありました?
【長渕】 物事を白黒ハッキリとさせるところが似ているなと思いました。たとえそれが間違った道でも、自分が信じていれば行っちゃうみたいな“やってみないとわかんないじゃん”っていうポジティブな性格は、すごく似ているなと。いいのか悪いのかはわかりませんけど(笑)。

――セリフは難しくありませんでしたか?ビートについてかなり語っていましたよね。
【長渕】 そうなんですよ。“19○○に何があって……”という説明っぽいセリフが多かったので、それを自分の言葉にしていうのには、ちょっと苦労しました。なので、けっこう勉強しましたね。ボブ・ディランについてだったり、ビート文学についてだったり、音楽も聴いたし、当時の映像を観て、知識とともにセリフを自分のなかに入れていく感じでした。
――林遣都さんとのエピソードを教えてください。
【長渕】 なんせ(ニューヨーク撮影の)キャストがふたりだけだったので、スタッフさんも含めてみんなで毎日ご飯を一緒に食べていましたよ。一緒にミュージカルを観に行ったりもしたので、家族みたいな感じでした。遣都くんとは、2時間くらいマンハッタンの街を散歩したこともありましたね。私が地図を持って、“あっちじゃない?”“こっちじゃない?”とかいいながら。役について話すこともできたので、すごくいい時間を過ごせたと思います。撮影が始まって最初の頃にそんな時間を過ごせたので、早く仲良くなることが出来ました。
――映画のなかで家族の絆、父親の存在がひとつのテーマでしたが、文音さん自身にとって、お父さんの存在とはどういうものなのですか?
【長渕】 大きいですね。大きいですし、いちばん尊敬している人です。
――音楽的な影響はありますか?
【長渕】 実は私、ロックはあまり聴かないんですよ。弟2人はギターをやっているので、それはお父さんに影響されたと思うんですけれど、私は音楽に関してはあまりないかもしれないですね。
――今回のドラマは、世代的にお父さんが興味をもたれるのではないかと思いますが。
【長渕】 “羨ましい”といっていましたね。撮影が終わって、ニューヨークを満喫して帰ってきて、ボブ・ディランのレコーディング・スタジオとか、住んでいた家とか、いちばん最初に歌ったライブハウスも観てきたし、ゆかりの地をたくさん回ってきたという話をしたんですよ。お父さんもボブ・ディランに感化されてきたひとりだと思うので、“俺が行きたいよ”みたいな感じでした(笑)。
――ちなみに文音さんは、どんな音楽を聴いているんですか?
【長渕】 私はR&BとかHIP HOPをよく聴いています。なかでもR・ケリーが大好き。私、インターナショナルスクールに通っていたので、周りの環境がそういう音楽だったんですよ。なので自然とそっちの方向に行きましたし、今でもほぼ洋楽を聴いていますね。
――では、憧れの女優さんはいらっしゃいますか?
【長渕】 リブ・タイラーさんは尊敬している女優さんです。彼女もお父さんがスティーブン・タイラーという有名なロックアーティストですよね。そして彼女自身も女優としての地位を確立している、それはすごいなと思いますし、そういうところに憧れを抱いています。
――今後、挑戦してみたいことを教えてください。
【長渕】 極端な役をやってみたいですね。デイジーはちょっと過激でしたけど(笑)、でももっとぶっ飛んだ役をやってみたいです。私がいつも心がけていることは、与えられたことを精一杯やるということ。精一杯やり続けていけば、その先の道は続いていくと思うんです。だから、いつも全力で向かっていきます。そして、いつもオーディエンスに何かしらの影響を与えたり、メッセージを伝えることができる表現者でいたいなと思っています。
(文:三沢千晶/写真:片山よしお)