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Check 2011年02月09日

34才の僕が自然に演じられる大人

  • 伊勢谷友介
―― 伝説の減量シーンに向けて体重を10キロ絞るなど肉体的にもハードルの高い役だったと想像しますが、カリスマ性の強い力石を演じるにあたって、どんな準備をされましたか?
【伊勢谷】 多くの方々の期待を乗り越えなきゃいけないというプレッシャーが僕のお尻を叩いてくれた部分はありました。語弊のあるいい方かも知れませんが、スポーツ根性ものという意味では、相当モチベーションを上げていかなくてはできない役どころでしたから。時間をかけて体を作り、それを発揮する機会をいただけたことは、役者としてありがたい経験だったと思います。
―― 「力石徹のテーマ」にもある「自分の傷は自分でなめろ」的な生き様にはどう立ち向かおうと?
【伊勢谷】 力石は、普段は感情を押さえ込み、リングの上で解き放つ。外に向かって吠えることで自分を鼓舞するのではなく、自分の心のなかで炎を燃やすタイプの男です。結果的にジョーと戦うためにバンダム級まで落とすわけですから、にじみ出ちゃってはいるんですが(笑)。それでも34才の僕が自然に演じられる、大人のスタンスを持っていました。また、寡黙で不器用な男ではありますが、リングの外では三つ巴のスーツを着こなしちゃう辺りに、朴とつな男とはちょっと違う色気というかスノッブな部分も意識していました。(劇場版アニメの)故・細川俊之さんのニヒルな声もイメージのひとつにありましたね。

生きていくうえでの大事な意識

  • 伊勢谷友介
  • 伊勢谷友介
―― 力石と対照的なジョーについては、原作や撮影現場でどんな印象を抱かれましたか?
【伊勢谷】 かわいいですよね、ジョーは。誰に対しても分け隔てなく、同じ態度で接するところに逆に男らしさを感じました。ドヤ街(※)の子どもに対しても悪い大人にも、丹下段平にも、いちいち相手にして、同じ悪態をつく。自分も彼らと同じ底辺の人間なんだという意識があるのかも知れませんが、ジョーのそういうところが僕は好きでした。かわいいって思うのは、山下(智久)くんが演じたことも大きいですね。山下くん、子犬みたいでホントにかわいいんだよ(笑)。
―― ふたりが出会うシーンで、「オレはどこにいたって自由なんだよ」と少年院で暴れるジョーに対して「安い自由だな」と吐き捨てる力石。静と動のバランスの妙がふたりの宿命を感じさせるナイスアクトでした!
【伊勢谷】 本当にそうなんです! あのセリフは僕自身のテーマでもありますが、責任を取っていない人に自由はないと思うんですよね。責任から逃れては、自由も平和もない。動くことで生まれる責任もありますが、そもそも動けるということはそれだけでひとつ責任を取っているわけだから。例えば何か発言をするときに、自分が誰であるかを明らかにするかしないかで、発言の持つ意味は大きく違ってくる。誰だか分からなければ、無責任なこともいえますよね?やはり責任を果たそうとする意識って、生きていくうえで大事だと思います。現代の若者にはトライすることを恐れる傾向があるみたいですが、この映画の登場人物たちのようにトライしてエラー(失敗)することで、成功するより得るものがあったりもする。不器用な彼らの発するシンプルなエネルギーを受け取り、自らのモチベーションに変えて、明日を生きる力にしてもらえたらうれしいですね。そんなきっかけを与える映画になっていればと思います。

(文:石村加奈/撮り下ろし写真:草刈雅之)

※ドヤ街:宿(ヤド)の倒語からきている、日雇い労働者用の簡易宿泊所が集まる区域のこと

伊勢谷友介
1976年5月29日生まれ。東京都出身。
1998年、『ワンダフルライフ』で映画デビュー。その後、映画を中心に数々の作品に出演する。近年は『ブラインドネス』(2008年)をはじめ、『人間失格』/『十三人の刺客』(2010年)など国内外の映画で活躍。存在感あふれる演技が高い評価を受ける。また、テレビドラマ初出演となったNHKドラマスペシャル『白洲次郎』(2009年)に続き、昨年はNHK大河ドラマ『龍馬伝』に高杉晋作役で出演し、注目を集めた。

story

昭和40年代、東京の下町で殺伐とした生活を送る矢吹丈は、元ボクサー・丹下段平にボクサーとしてのセンスを見出される。しかし、問題を起こした丈は少年院へ。そこでチャンピオンレベルの力を持つプロボクサー・力石徹と運命の出会いを果たす。ひと足先に少年院を出た力石は、恵まれた環境のなか連戦連勝し、エリート街道をひた走る。一方の丈は、段平と二人三脚の特訓を行い、「クロスカウンターパンチ」を得意とする人気ボクサーとなる。やがて、力石は世界タイトルに手が届くところまで上り詰めるが、世界戦の前に丈との決着を望み、丈も力石戦実現を強く求める。そして、運命の日。ふたりは宿命のリングに上がる。
監督:曽利文彦
出演:山下智久 伊勢谷友介 香里奈 香川照之 勝矢 杉本哲太 倍賞美津子 津川雅彦
2011年2月11日(金・祝)全国東宝系ロードショー
(C)2011 高森朝雄・ちばてつや/「あしたのジョー」製作委員会

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