ORICON STYLE

2010年07月14日
エピソードは増えるのに、話がおもしろくならない……

――19才のときからスタートした企画だそうですね?
【小栗】 当時“ハタチになったら、劇的に人生が変わる!”みたいなイメージがあったんですよ。酒が飲めるとか、煙草が吸えるとか、そんなことだけでもけっこうデカイなと(笑)。そんな時期に、「成人式にもう1回、自分で性別を選べたらおもしろいな」という思いつきから、物語を作り始めたんです。政府が開発した、チープな性転換装置に翻弄されていく、5人組の男の子たちのストーリー。でも、起承転結をしっかり考えてプロットを作っていないから、エピソードはどんどん増えるのに、話がおもしろくなっていかない。収拾がつかなくなってしまって……。


――どんなタイミングで、脚本家の武藤将吾さんが参加を?
【小栗】 昔、池内(博之)くんと一緒にやった、CX Division1-STAGE4『ハングリーキッド』(2004年/フジテレビ系)という深夜ドラマの脚本を書かれたのが武藤さんだったんです。武藤大助という、将吾になる前のクレジットで。男同士の友情とか、暑苦しいのを書かせたら、この人すごいなって。読み手に伝わってくる、熱いものがある。それで、同世代の武藤さんにお願いしました。第1稿の段階で、ほぼ決定稿の形にまで完成していて、すごくおもしろかった。読みながら興奮しました。


――本作の主人公となる、バカで最強な男の子5人組と対峙する、ファム・ファタール的な存在の美沙像については?
【小栗】 武藤さんとやりとりするなかで生まれました。『ハングリーキッド』も『傷だらけの天使』(1974〜1975年/日本テレビ系)を借りてやらせてもらおうというスタイルの作品だったんですが、僕はどこか昭和チックなものが好きなんですよね。美沙にも、寅さんが出会うマドンナのような雰囲気があって。武藤さんとは「峰不二子だよね」って話しながら、美沙像を膨らませていきました。撮影現場では、小西(真奈美)さんのお芝居から、美沙の気持ちを発見させてもらいながら、改めて作っていった感じです。男の気持ちはわかるけど、女の気持ちはわからないので(笑)。

いつかは撮りたいという漠然とした思いから

――――大胆に加速していくストーリーのなか、ときにバイオレンス・シーンの迫力に圧倒されました。
【小栗】 これまで自分がやらせてもらったアクション・シーン、たとえば『クローズZERO』なんかは、アクションがメインなので、カッコ良くて当たり前だと思うんですけど、実際に街中で見かける殴り合いって、無様なものが多い。やっぱり何もできない人が殴られるって悲惨なことだから、そこはただただ、リアルに見えた方がいいと思いました。ショッピングモールで、京平(勝地涼)が追い詰められ、ヤクザのリンチを受けるシーンはうまくいったと思います。有無を言わさず、モーションもない、(五味役の山口)祥行さんのミドルキック、最高に良かったです。


―― 一方、カーチェイスやガン・アクションへの演出上のこだわりは?
【小栗】 バイオレンスとは逆に、僕らの現実からはかけ離れているものなので、そこにリアルはなくていい。大好きな『ルパン三世』や『COWBOY BEBOP』の世界観に近づくことを目指して、とにかくカッコ良さを大事にしました。カーチェイスのシーンでは、制約の多いなか、スタッフのみなさんの力で文句のない撮影ができたし、さらに編集の掛須(秀一)さんがスピード感を加えてくださいました。すごく感謝しています。


――音楽には菅野よう子さんを迎えるなど、小栗監督だからこそ実現した、ミラクルなキャスト&スタッフ陣の個性をフレッシュにミックスさせた力作。初監督作の手応えは?
【小栗】 撮影に関しては、十分に準備期間が作れないなかでのスタートだったので、撮影中は地獄でした(笑)。でも編集が始まってからは、菅野さんの音楽を待っている時間も楽しかった。ずっと編集していたかったですね。僕自身、いつかは映画を撮ってみたいと漠然とは考えていたのですが、こんなに早く撮らせてもらえるとは思っていませんでした。しんどいことも多かったですけど、完成した今、言えるのは、今の自分で撮らせてもらって本当に良かった作品だなって。あと数年後なら、このスピード感や考え方では撮らなかったと思うので。ダサイけど、正直に生きようとする男の子たちのストレートにがんばる姿から“人生ってすばらしい”と感じてもらえたらうれしいですね。


――最後に、今、もし性転換装置があったら、小栗監督はどちらを選びますか?
【小栗】 実は僕の考えていた装置には、一生変えられないという制約があったんです。そうなると、もう確実に男を選びますね。1ヶ月くらいなら女の人になってみたいなって未だに思いますけど。楽ですから、男は(笑)。シンプルだし、単純だし。ラストシーンは大好きです。勝地涼が最高にいい顔をしています!


(文:石村加奈)
PROFILE

小栗旬
1982年12月26日、東京都出身。 小学6年からエキストラを始め、1998年のドラマ『GTO』で連続ドラマ初レギュラー出演。その後、ドラマ『ごくせん』(2002年)、『救命病棟24時』(2005年)、映画『キサラギ』(2007年)などで注目を集め、『花より男子 ファイナル』(2008年)、『クローズZERO』(2007年)、『クローズZERO II』(2008年)で人気を不動のものに。蜷川幸雄演出の舞台『カリギュラ』(2007年)、『ムサシ』(2009年)では確かな演技力で表現者として多くの可能性を示した。映画『シュアリー・サムデイ』で監督に初挑戦。

ARTIST PAGE ARTIST COMMUNITY OFFICIAL SITE
シュアリー・サムデイ
シュアリー・サムデイ
 

中止になった文化祭復活のために学校を占拠したら、ハッタリのはずの爆弾が誤爆!事件以来、何をやってもうまくいかない巧、京平、和生、雄喜、秀人。ある日、ヤクザ稼業に身を落とした和生と再会し大事件が勃発!絶体絶命の大ピンチ!バカで最強だった5人が、全てを取り戻すために再び立ち上がる!


監督:小栗旬
出演:小出恵介 勝地涼 鈴木亮平 ムロツヨシ 綾野剛 小西真奈美 ほか
2010年7月17日(土)全国ロードショー
(C)2010「シュアリー・サムデイ」製作委員会