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“平均点的ないいお話”で終わらせない『僕とシッポと神楽坂』

動物への愛情が深いキャスト&スタッフが集結したという『僕とシッポと神楽坂』(C)テレビ朝日

動物への愛情が深いキャスト&スタッフが集結したという『僕とシッポと神楽坂』(C)テレビ朝日

 ペットの生と死に真摯に向き合う心優しい獣医師が主人公の『僕とシッポと神楽坂』が、高評価のまま終盤を迎えようとしている。映像作品で動物を扱うことへの姿勢や、癒やし系の作風に躍動感を与えている個性的なキャスティングなど、ドラマの制作背景についてテレビ朝日の都築歩プロデューサーに聞いた。

動物たちに自由に演技をしてもらうことを意識した

 テレビ朝日の金曜ナイトドラマ『僕とシッポと神楽坂』が、いよいよ残すところあと2話で大団円を迎える。

 東京・神楽坂を舞台に、主演の相葉雅紀が演じる若き獣医師が、動物や飼い主たちと繰り広げる心温まる物語。10年以上にわたり『天才!志村どうぶつ園』(日テレ系)に出演してきた相葉と動物との相性からも、本誌調査による放送前のドラマバリュー期待度では深夜枠1位を獲得していたが、放送開始後の満足度調査ではさらに高ポイントをキープし続けている。

「毎話、放送が終わるたびに番組宛てや視聴者センターにたくさんの感想をいただいています。ネットに書き込むだけでなく、直接声を届けたくなる作品になったんだなと改めて感じています」

 なかでもやはり多いのは、動物を愛する視聴者からの声。放送前には「動物に無理をさせないでほしい」といったドラマ制作者にとってはシビアな要望も届いていたという。

「私も犬が大好きですし、そもそもこの原作をドラマ化するにあたって、動物に何かを強要するのはおかしいと考えていました。なのでキャストもスタッフも動物への愛情が深い人たちに集まってもらいました。“動物待ち”の時間が発生しても、余裕を持って待てる姿勢のある人たちでやりましょうと。何度かカメラを回してうまくいかなかったときは、動物たちの動きに合わせて演出を変えたこともあります」

 そこから生まれる動物たちの伸び伸びした動きは、動物の生と死をテーマにしたときに、シリアスにならざるを得ない物語に癒やしをもたらしている。

「(動物病院の看板犬の)ダイキチがたまに画面の奥で見切れたりするんです。お尻だけ映ったりとか、そんな画を楽しんでくださっている方もいるみたいですね。動物たちに自由に演技してもらうという当初から意識していたことが画面から伝わっているからこそ、動物を扱った作品としては珍しくクレームもほとんど届いていません」

どこか不思議な神楽坂の世界観を醸し出す

 伸び伸び演じているのは動物たちだけではない。素朴な主人公と個性豊かな登場人物たちとのやりとりも見どころで、癒やし系に偏りがちなドラマに躍動感を生んでいる。

「心温まる原作に、ハマり役の相葉さん。このまま普通に作ったら“平均点的ないいお話”で終わってしまう懸念がありました。コンテンツが溢れている今の時代、個人的にはたとえ悪評でも話題にならない作品よりはいいという思いでドラマを作っています。そういう意味で今回は、主人公を取り巻くキャラクターに少し変わった世界を持っている面々を揃えることで、神楽坂のどこか不思議な世界観を醸し出すことをイメージしました。また相葉さんは受けの芝居が巧みな方なので、全員が攻めてもバランスを取ってくれるだろうという計算もありました」

 ドラマの終盤にかけては、広末涼子が演じる動物看護師のトキワとコオ先生の関係も気になるところ。トキワは南米で行方不明になっている夫を待つ身。また、コオ先生も動物と向き合うあまり恋愛には疎いだけに、ヤキモキしながら観ている視聴者も多いはずだ。

「いろいろなことは忘れてくっついちゃえばいいじゃん、といった声も多く届いています。応援したくなる2人をイメージして描いてきたので、ちゃんと伝わっていてホッとしています。最終回までには2人がある決断をするので、そこも注目していただきたいですね」

 ところで金曜ナイトドラマと言えば前作『dele』をはじめとした鋭い切り口の作品が多く、本作のようなヒューマンドラマは珍しい。なお本誌調査ではF1〜F2の支持がとくに高く、小さい子どもを交えたファミリー視聴も多いことがうかがえる。

「ペットを飼う一人暮らしのご老人や独身男女が増えた現代、きれいごとだけを描くのではなく、ペットとのお別れにどう向き合うかという正解のない答えにいくつかの選択肢を提示することで余韻を残す作品にしたいと考えていました。その点については『一度は考えておかなければいけないことだった』と、いい評価をいただいています。ただ『子どもにも観せたいので、もっと早い時間帯に放送してほしかった』という声も想像以上に多かったですね」

 リアルタイム視聴が減って久しい昨今だが、その質や作風によってはまだまだ可能性があることを証明したとも言える。最終話にかけての視聴率の伸びにも期待したい。
(文:児玉澄子)

提供元: コンフィデンス

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