ロックバンドで“ポップス” 緑黄色社会に見るJ-POPバンド新潮流

 愛知県出身・在住の4人組バンド・緑黄色社会が、ミニアルバム『溢れた水の行方』で11月7日にメジャーデビューした。2013年開催の10代限定フェス『閃光ライオット』で準グランプリを獲得し、インディーズ時代より人気を得ていた。今年3月にインディーズで発売したアルバム『緑黄色社会』が、オリコン週間アルバムランキングでTOP20入りし、音楽シーンで頭角を現している。ロックバンドのスタイルで“ポップス”を表現することにこだわる緑黄色社会は、Mr.Childrenやスピッツらのように、ブレイクが期待されている次世代バンドだ。

根底にあるのは“王道のJ-POP”

 Mr.Children、スピッツなどがミリオン・セールスを連発していた1990年代。ブレイクしたロックバンドの楽曲は、幅広い層のリスナーに親しまれるポップスとして機能していた。それから20年数年が経過した現在、ロックバンドは“ロックシーン”及び“フェスシーン”の枠のなかに収まってしまったようにも感じる。そのこと自体の是非をここで問うつもりはないし、今のロックシーンが魅力にあふれているのも事実だが、“ロックバンドの楽曲=ポップス”という図式が成立しづらくなっていることに異論の余地はないだろう。

 愛知県出身・在住の4人組バンド・緑黄色社会は、そんな状況を打破し、幅広いリスナーに訴求できるポテンシャルを持ったバンドの1組だ。2012年に結成。2013年の10代限定フェス『閃光ライオット』で準グランプリを獲得し、注目を集めた。その根底にあるのは“王道のJ-POP”だという。

小林壱誓 YUIさんやGReeeeNが音楽に興味を持った入口。ダンスをやっていたので、EXILEも聴いていました。バンドではBUMP OF CHICKENが好きですね。
peppe 母の影響でSMAP、DREAMS COME TRUEを子供の頃から聴いていました。西野カナさん、加藤ミリヤさんも好きでした。
穴見真吾 子供の頃から嵐の曲が好きでした。アニソンも好きで、FLOWなどもよく聴いていました。
長屋晴子 私は大塚愛さん、いきものがかり、aikoさんなどがルーツ。女性ボーカリストに惹かれていたんですよ。メンバー4人ともいろんな音楽が好きなんですが、共通しているのはJ-POP。それは緑黄色社会の楽曲にも自然と反映されていると思います。

 結成当初は「明確な方向性を決めず、そのときにやりたいことをやっていました」(長屋)という4人だが、楽曲制作とライブを重ねながら、徐々に独自のスタイルを確立。“ロックバンドのスタイルでポップスを表現する”という現在のスタンスに辿り着いた。

長屋 いまはド真ん中のJ-POPをやりたいと思っています。そのなかでバンドらしいヒネくれたこと、個性的な部分も表現できたらなと。
小林 緑黄色社会の音楽は、ボーカルの長屋が中心。彼女の歌を引き立て、彩ることで、バンド全体が良くなっていくと思うので。メンバーそれぞれのセンスを活かして、常に驚きを与えられるバンドになりたいという気持ちもありますね。

 1stミニアルバム『Nice To Meet You??』(2017年1月)、2ndミニアルバム『ADORE』(2017年8月)、1stフルアルバム『緑黄色社会』(2018年3月)と順調にリリースを重ね、そのたびに楽曲のバラエティを広げてきた彼ら。11月7日に発売された最新ミニアルバム『溢れる水の行方』でメジャーフィールドに進んだことで、メンバーの意識も少しずつ変化しているようだ。

長屋 国民的な存在になりたいという夢があるのですが、メジャーとの契約はその過程の1つだと思っていて。バンドに関わってくれるスタッフの数が増えて、自主企画イベントやグッズの制作など、“こういうことをやってみたい”というコミュニケーションも取れるようになってきました。
peppe 皆さん、本当に親身になってくれるので、“この人たちのためにもがんばろう”と思えるようになりました。

優れたポップネスとバンドとしての個性を併せ持つJ-POPの新潮流

 ミニアルバム『溢れた水の行方』は、ポップスとしての魅力と個性的なバンドサウンドを共存させた緑黄色社会の音楽性がさらに進化していることを証明している。リードトラック「あのころ見た光」はpeppeが作曲、小林と長屋が作詞を担当。未来に向かって進もうとする決意を描いたこの曲からは、現在の4人のモードが伝わってくる。

小林 曲を作ったのは2年前で、peppeがデモを持ってきて、僕が最初に歌詞を書きました。当時は21才で、その頃の等身大の気持ちを書こうとしていて。今回のミニアルバムに収録するにあたって、長屋の歌詞を加えることで、現在の視点も感じられる曲になりましたね。
長屋 “あのころ”にはJ-POPに憧れ始めたときの気持ちも入っています。中学生の頃に“シンガー・ソングライターになりたい”と思ったのが原点なので。

 その他、メンバー最年少(20才)の穴見が中心になって制作したダンスチューン「Never Come Back」、peppe、長屋の共作によるラブソング「Bitter」など、4人の個性とセンスが活かされた楽曲を収録。メンバー全員がソングラインティングに関わっていることも、このバンドの特徴だ。

長屋 メンバーが1人で作ったデモを持ち寄って、他の人が歌詞を書いたり、メロディーやアレンジを加えたり。いろいろな作り方ができるのも、私たちの強味だと思います。
穴見 まだまだ表に出せていない部分もたくさんあるので、それをしっかり形にして届けたいですね。
peppe どんな曲も長屋が歌うと緑黄色社会の楽曲になるんですよね。ボーカルが入るたびに“曲を良くしてくれてありがとう”って思うので。

 今年は夏フェスにも出演し、エンターテインメント性に満ちたステージを見せつけた4人。「以前は失敗が怖くてまったく前が向けなかったんですけど、いまはむしろ“ずっとお客さんを見ていたい”という気持ちがあって。そこも成長できた部分かな」(peppe)とパフォーマンスの質も大きく向上している。今後は自主企画イベント『緑黄色夜祭』にもさらに力を入れていくという。

小林 9月末から10月に東名阪で開催した『緑黄色夜祭』には、ビッケブランカさん(大阪/台風のため中止となった)、ONIGAWARA、SAKANAMON(東京)、DADARY(名古屋)の皆さんに出演していただきました。これからも自分たちが好きなアーティストやバンドをお呼びして、もっと大きなイベントにしていきたいですね。
長屋 地元のナゴヤドームで“夜祭”を開催するのが夢です。私たちが生まれ育った場所だし、地元を大事にしたいという気持ちもある。04 Limited Sazabyさんが名古屋のモリコロパークで開催している野外フェス『YON FES』にも憧れますね。

 11月から年末にかけて全国ワンマンツアーを開催。「今年2度目のワンマンツアー。成長した姿を見てもらいたいし、必ず成功させたい」(長屋)という強い決意で臨む今回のツアーでさらなる成長を遂げるだろう。優れたポップネスとバンドとしての個性を併せ持った緑黄色社会がJ-POPの新たな流れを作ることができるか、大きな期待を持って注目していきたい。
緑黄色社会 オフィシャルサイト(外部サイト)

提供元: コンフィデンス

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