TOHO animation『君の名は。』に続く第2弾『打ち上げ花火』、ヒットさせるための多方面の戦略
大衆性が必要。でも作家性にこだわってほしい
「公開規模が大きくなれば、当然それだけのヒットをさせなければいけないので、作家性だけではなく、大衆性も求められます。どちらを主軸にするかというのは、監督のキャリアにおけるタイミングですね。新海監督の作品を絶対にヒットさせようというつもりでいろいろと提案しましたが、たとえば『秒速5センチメートル』のすぐあとだったら、大衆性に寄せたスタイルにシフトするのは新海監督も受け入れられなかったかもしれません。ヒットさせるには大衆性が必要ですが、プロデューサーとしては作家性にもこだわってほしい。監督がこちら側の言いなりになるのは違うと思います。そのバランス感覚という意味では、新海監督は極めてプロデューサー的な資質を持った方です」
「『君の名は。』も7月公開という考えもあったのですが、東宝としては力を入れている7月29日公開の『シン・ゴジラ』もあり、完全オリジナル作品ということで、数字的な読みの部分での怖さがありました。もちろんプロデュースチームとしては8月26日公開だと、夏休みが5日間しかないという思いもありました。でも、フタを開ければすごい結果になりました。7月のヒット映画の上映前の予告編に8月公開の作品を入れることで、シャワー効果みたいなものが期待できるという実績も得られました」
記録的大ヒットのあと、大規模公開2作目の目標数値
「『君の名は。』のときは、カドフェス(角川文庫の夏フェア)で新海監督の小説をメインにしていただきました。『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』でも、脚本の大根仁監督の書き下ろし映画原作小説、原作の岩井俊二さんのスピンオフ小説を発刊していますが、書店の売り場でかなりの露出をしていただいています。こうしたスタイルは、夏の公開作品にはかなり効果的なんです」
今作の魅力については「これまでに(アニメーションスタジオ)シャフトが培ってきた作風の流れを汲みつつ、大衆性も備えたメジャーな作品に仕上がっています。岩井さんの原作では登場人物は小学生だったのですが、今作では中学生にしました。そのぶん青春の瑞々しさが映像のなかに出ていますし、新房監督のフィルムには、シーンごとの風景や体のパーツが非常に個性的に焼き付いています」と力強く語る古澤プロデューサー。
(文:磯部正和)
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
「かけおち、しよ」
なずなは典道を誘い、町から逃げ出そうとするのだが、母親に連れ戻されてしまう。それを見ているだけで助けられなかった典道。
「もしも、あのとき俺が…」
なずなを救えなかった典道は、もどかしさからなずなが海で拾った不思議な玉を投げつける。すると、いつのまにか、連れ戻される前まで時間が巻き戻されていた…。何度も繰り返される一日の果てに、なずなと典道がたどり着く運命は?
原作:岩井俊二
脚本:大根仁
総監督:新房昭之
声の出演:広瀬すず 菅田将暉 宮野真守 / 松たか子
2017年8月18日公開 【公式サイト】(外部サイト)
(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会