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好調理由は“地に足ついたドラマ作り”にアリ、『緊急取調室』Pに聞く制作のこだわり

 シリーズ第2弾を迎えた女優・天海祐希主演の木曜ドラマ『緊急取調室』(テレビ朝日系)。取調室を舞台に、専門チームと凶悪犯が緊迫した心理戦を繰り広げる物語が視聴者の心をつかみ、初回視聴率(関東地区)は17.9%。2、3話目も2桁台と好調をキープしている。ゼネラルプロデューサーを務めるテレビ朝日・三輪祐見子氏に、同作の人気を支える制作の“こだわり”を聞いた。

15年のSP版の放送で手応え「同作でやるべきこと、方向性が見えた」

 初回視聴率(関東地区)17.9%、2、3話目も2桁台をキープしている木曜ドラマ『緊急取調室』(テレビ朝日系)は、取り調べの録音録画(可視化) を義務付ける「刑事司法改革関連法案」が国会に提案されたことをきっかけに、第1弾が14年1月期に同枠で放送。女優・天海祐希演じる叩き上げの取調官・真壁有希子が、可視化設備の整った取調室で取り調べを行う専門チーム「緊急事案対応取調班(通称・キントリ)」のメンバーとともに、数々の凶悪犯と一進一退の心理戦を繰り広げる物語である。

 「取調室が主な舞台ですから、刑事ドラマとしての派手さはありません。そういう不安はありましたが、狭い空間で緊迫した雰囲気の中、人1人を深掘りして、丸裸にしていく人間ドラマとして、今までにない刑事ドラマが作れたのではと思っています」(ゼネラルプロデューサー・三輪祐見子氏/以下同)
  • 三輪祐見子氏(テレビ朝日 総合編成局 制作2部 ドラマ制作ゼネラルプロデューサー)

    三輪祐見子氏(テレビ朝日 総合編成局 制作2部 ドラマ制作ゼネラルプロデューサー)

 その手応えは、15年に放送されたスペシャルドラマでさらに確かなものとなり、「このドラマでやるべきことや方向性が見えた」ことでシーズン2制作に至ったという。

 「今、ニュースを見ていても、親族 殺人や、つい最近まで普通にお付き合いしていた近所の人が殺人を犯すなど、思ってもいなかったような悲しい事件がたくさん起きています。 人が越えてはいけない一線を越えるきっかけとは何なのか。誰でも罪を犯す可能性を秘めているし、いつ何時被害者になるかもしれない。人には皆、そのギリギリの見えないラインがあるのではないかと考えたのです。

 それは一般的な事件ものや刑事ドラマではなかなか描きづらく、難しい部分ですが、そこにもドラマが あると考えました。刑事ドラマがたくさんあるテレ朝で、ほかではできないことをやり、もっと面白いドラマにするためにもあえてそこを攻めてみようと思いました。脚本の井上由美子さんがその部分を、社会性のある切り口で、絶妙に書いてくださっています」

明暗の演出とベテランキャストで緊迫の取調劇を実現

『緊急取調室』第5話より (C)テレビ朝日

『緊急取調室』第5話より (C)テレビ朝日

 そして、シーズン2のテーマを普通の人間が一番怖いと設定した。「人生はやりきれないこともあるし、 白黒はっきりつけられないグレーな結末を迎えることもある。けれど、 なかなか捨てたもんじゃない。大人の視聴者に、そういう物語を観ていただきたいです」

 取調室という狭い空間が主な舞台となるだけに、こだわっているのが演出面とキャストだという。

 「室内のシーンが多いので、単調にならないよう、カメラワークも含めて照明や色調整にまでこだわっています。舞台が変化しないぶん、音楽はダイナミックにしてほしいと、音楽担当の林ゆうきさんにオーダーしました」

『緊急取調室』第5話より (C)テレビ朝日

『緊急取調室』第5話より (C)テレビ朝日

 キャストに関しては、シーズン1から引き続き、キントリのメンバーに、田中哲司、でんでん、大杉漣、小日向文世など豪華なメンバー。犯人役となるゲストも、毎回、実力派を揃えている。

 「舞台出身の役者さんが多く、皆さんには思う存分自由にやっていただいています。犯人役に関しては、芝居がしっかりできて、まるで舞台を観ているような独特の雰囲気を作れる方をキャスティングしています。取調室というワンシチュエーションで、天海さんと対峙しなければいけない役どころですからね。キャスティングも含めて、流行に取びつくことはせず、地に足がついたドラマ作りをしているつもりです。その安心感や安定感も視聴者に楽しんでいただけているのかもしれません」

 大人の心に響くドラマ作りにこだわり、新たな刑事ドラマを生み出した本作の挑戦に注目したい。

◆三輪祐見子(みわ ゆみこ)
テレビ朝日 総合編成局 制作2部 ドラマ制作ゼネラルプロデューサー。92年に入社。『OL銭道』で連続ドラマ初プロデュース。近年では、「遺留捜査」シリーズ(11年〜15年)、「DOCTORS 最強の名医」シリーズ(11年〜15年)、『刑事7人』(15〜16年)、『グッドパートナー 無敵の弁護士』(16年) などを手がけた

(文/河上いつ子)

(『コンフィデンス』 17年5月15日号掲載)

提供元: コンフィデンス

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