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ディズニー音楽の巨匠アラン・メンケン氏が明かす楽曲制作「どうしたら音楽で物語を綴ることができるか」

世界中で愛されるディズニーの名曲の数々を生み出し、存命の個人としてはもっとも多い計8回のオスカー受賞歴を誇る作曲家のアラン・メンケン氏。『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『アラジン』でアカデミー賞主題歌賞と作曲賞、『ポカホンタス』で歌曲賞と音楽賞を受賞している音楽界の重鎮に、観るものの感情を盛り上げ、ストーリーの推進力にもなる音楽と物語の関係性など、ディズニー音楽の制作秘話を聞いた。

キャラクターとストーリーのユニークな面を音楽で映し出す

 アニメーション映画として史上初めてアカデミー賞作品賞にノミネートされ、今なお世界中で愛され続ける名作『美女と野獣』(91年)が、ベル役にエマ・ワトソンを迎えて実写化された。その音楽を手がけるのは、もちろんアニメーション版と同じメンケン氏。これまでに数々の映画や舞台で名曲を生み出してきた巨匠には、ディズニー音楽を手がけるうえで大切にしていることがある。
「ディズニー映画の作曲をする際にいつも念頭に置いているのは、キャラクターとストーリーの重要性です。まずストーリーを的確に捉え、そのなかのユニークな面を映し出すような音楽を作らなければいけない。登場するキャラクターたちが歌を通してどのように物語を紡いでいくかを考えるのが作曲家の仕事です。もちろんディズニー作品だけではなく他のプロジェクトも同様ですが、キャラクターやストーリーが自身のなかで明確なものとして出来上がって初めて共同制作者と一緒に曲を書き始めることができます」

 アニメーション映画のサウンドトラックというと映像ありきで作られているイメージもあるが、「実は映像が先というわけでもない」と制作過程を明かしてくれた。
「なによりもまず最初にあるのはストーリーテリングと構造。そこから映像や音楽が作られていきます。私が作曲するうえで大事しているのは、どうしたら音楽で物語を綴ることができるのかということ。そのためにはストーリーのどのシーンを音楽で彩るかが重要。それをふまえて音楽も映像も作られていくわけです。もちろん、映像にあわせて作ることもありますが、順番は問題ではありません。なぜなら作曲家は音楽面でのストーリーテリングを担っているわけで、基本的にはどちらが先でも物語を彩るための音楽を作ることには変わりはないからです」

ディズニー音楽は歌詞も含めて映画全体を支えるものでなければ

 メンケン氏が手がける映画音楽は『美女と野獣』『アラジン』などのように誰もが口ずさめる歌唱曲も多い。メインとなる主題歌と全体的なスコアの作曲方法の違いも明かしてくれた。

「ディズニー映画は主題歌やメイン楽曲のエッセンスが作品のあちこちに散りばめられているので、歌詞も含めて映画全体を支えるものでなければいけないんです。つまり、メインとなる歌唱曲を制作してから映像を作り、そのあとに全体のスコアを作っていくといった流れなのです」

 歌唱曲といえば、日本では『ラ・ラ・ランド』が映画もサントラもヒット中だが、ミュージカル音楽も手がけるメンケン氏は、昨今の同シーンの盛り上がりをどのように見ているのだろうか。
「最近はかつて流行ったものが再びブームとして盛り上がることも多いですよね。ただ、ミュージカル映画や音楽映画に関しては昔からたくさん作られていて、最近になって急に増えたとかヒットしたという印象はありません。ミュージカル音楽を作っている身としては、『ラ・ラ・ランド』のような映画は良きハリウッドへのオマージュが感じられて大好きです。サントラは、これはこういう作品なんだと曲が伝えてくれて、幅広い音楽の届け方があります。私が映画を観るときはすべての音楽を聴いて、それ込みでいい作品だと感じます」
 長年多くの人に愛される音楽を作ってきたメンケン氏は、時代が変わっていくからこそ大切にしていることがある。

「私は日本文化からも影響を受けています。笛や琴の音色は古き良き日本の文化や伝統が感じられてとても興味深いです。時代が変わって人類が進化していくほど、なぜかいろいろなものが似通ってきますよね。着るものや食べるもの、音楽もそうです。そう感じたときは、時代を遡ってみるとおもしろい発見があります。作曲をするときもそういった発見を大事にしています」
(文:奥村百恵)
(コンフィデンス誌 17年4月17日号掲載)
アラン・メンケン氏
49年生まれ。アメリカ、ニューヨーク州出身。アカデミー賞ノミネート19回、うち受賞は8回を数える映画、舞台音楽の巨匠。実写『美女と野獣』(17年4月21日公開)ではアニメーション版(91年)の全曲を使用し、さらに新曲3曲を加えている。
【アラン・メンケン氏の作品一覧】
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提供元: コンフィデンス

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