白鳥が来る前に、あえて白鳥飛来地へ(群馬県・多々良沼)

群馬県館林市の多々良沼公園は、毎年冬に白鳥の群れが飛来することで有名です。関東地方でもトップクラスの飛来数は目を見張るものがありますが、では白鳥のいない時期はどうなのでしょう? 何もいなくて寂しいかというと実は全然そんなことはなく、秋ならではの渡り鳥がたくさん観察でき、バードウォッチャーも多く集まります。人気のシギ・チドリや猛禽類まで種類も千差万別。秋の七草を始めとした花も多く、見所が満載です!

緑ある、まだ暖かいシーズンの“白鳥の泉”

写真:鷹野 圭

JR館林駅から徒歩約45分、閑静な田園地帯の中に位置する多々良沼は水平線が見えそうなほどの広大な沼です。湖といっても過言ではないでしょう。冬場になればたくさんのカモと一緒にオオハクチョウやコハクチョウが飛来し、バードウォッチャーも集まって大いに賑わいますが、秋の暮れまではご覧の通りおだやかな雰囲気です。沼の周囲には広いヨシ原が広がり、樹木も多く、自然散策にも適したスポット。まだ静かな内に、のんびりと一周散策してみるのも面白いですよ。

写真:鷹野 圭

多々良沼のある館林市といえば、埼玉県の熊谷市に並ぶ日本でもトップクラスの暑い町。実際真夏は非常に気温が高く、水辺のために湿度も高いので熱中症の危険性もあります。しかし、10月に入る頃には暑さも和らぎ、ちょうどよい過ごしやすい気候に。冬季に入る11月中旬頃まで、快適に散策を楽しめることでしょう。
写真の池近くでは、トンボが多数発生します。秋の象徴であるアキアカネも健在。色づき始めた木々ともよくマッチします。

写真:鷹野 圭

沼の中央にある、橋を渡って行ける小島には浮島弁財天があります。江の島にある弁財天に由来しており、その設立の経緯を記した石碑が設けられています。貴重な史跡ですが、実はこの浮島は渡りのシギ・チドリの撮影には最適のスポット。他の岸辺は間にヨシ原や林などの障害物が入って沼までの距離がやや遠いため、間近で水鳥を観察したいのならここがおススメです。バードウォッチャーも毎年多く集まり、カメラの三脚がズラリと並びます。

秋の花咲く、多々良沼の岸辺

写真:鷹野 圭

秋を彩る代表的な花といえば、ヒガンバナの大群落を思い浮かべる方も多いことでしょう。ここ多々良沼でも群生している姿が見られ、周辺の田園地帯でも畦道などで見かけることでしょう。この花にはアゲハチョウがよく飛来し、蜜を吸っている姿がしばしば見られます。

写真:鷹野 圭

本来ならば真夏にピークを迎える「秋の七草」ですが、ここ多々良沼では南東端のお花畑で植栽されている姿が見られます。写真はキキョウ。かつては日本中の野山で普通に見られた花ですが、最近は自生のものもめっきり姿を消してしまいました。

写真:鷹野 圭

花が咲けば、蜜を求めて昆虫が訪れるもの。
写真は、浮島弁財天付近のセイタカアワダチソウに飛来したキタテハです。この花は外来種で花粉症の原因にもなるため、かなり嫌われていますが、虫たちにとっては貴重なレストラン。道端で見かけたら、チョウやハナムグリなどが飛来していないかチェックしてみましょう。ただし、時折ハチもやってきますのでその点は要注意です!

多々良沼は渡り鳥の中継地。秋はシギ・チドリで賑わいます

写真:鷹野 圭

シギ・チドリは、世界を旅しながら沼地や干潟などの湿った場所に飛来する鳥たち。日本には主に春と秋に飛来し、季節の移り変わりを実感させてくれるためにバードウォッチャーから非常に人気があります。写真のセイタカシギもその一種。スーパーモデルクラスの(身体の大きさから比べると)非常に長い脚を持ち、水深のあまりない浅瀬なら悠々と歩き回ることができます。
名前の由来にもなっている長い脚と白黒のツートンカラーで、秋の多々良沼でも目立ちやすい鳥です。地面にクチバシを突き刺してミミズなどの小動物を捕らえて食べる姿がよく見られます。

写真:鷹野 圭

関東でシギ・チドリがよく見られる場所といえば、東京湾周辺の干潟(三番瀬や谷津干潟など)が有名です。しかしながら海水のある場所でないと暮らせないというわけではなく、内陸である群馬県の多々良沼にも毎年多数が飛来します。中には、関東では北部でないと見られない種もいるほどです。
写真のウズラシギもその一種。東京湾ではかなり稀な渡り鳥ですが、多々良沼では秋になると比較的コンスタントに見られます。写真は逆光でわかりにくいかもしれませんが、帽子のような頭の赤茶色がチャームポイント。ハトよりもやや小さいくらいのサイズですが、泥の上は視界を遮るものがほとんどないため、比較的見つけやすいはずです。

写真:鷹野 圭

シギ・チドリのみならず、ちょっと早めに北国から渡ってきたカモや真っ白なサギなどが一緒にいることもある多々良沼。時に、写真のように数え切れないほどの大群をなしていることもあります。冬の主役であるカモ(ちなみに白鳥もカモの仲間です)とシギ・チドリが共存する期間は、秋でもごく僅か。10月中旬付近が狙い目です。

その他にも見られる鳥たち。中には珍しい鳥も……!

写真:鷹野 圭

かつては水質汚染に悩まされたこともある多々良沼ですが、最近は水も随分きれいになり、写真のようにカワセミも戻ってきました。エサとなる小魚やエビなどの小動物も豊富で、岸辺の足場などからダイブして捕らえる姿をよく見かけます。期間限定のシギ・チドリなどと違って年間を通じてここに住み着いていますので、散策がてら探してみましょう。

写真:鷹野 圭

やや影がかかってしまっていますが、これはツツドリという鳥。カッコウやホトトギスに近い仲間で、主に夏鳥として飛来しますが秋頃まで残っていることもあります。上のカワセミなどとは違い、このツツドリは本来森の鳥ですが、多々良沼の周囲には高い樹木も多く、こうした木にとまるような小鳥も結構見られます。
もちろん、冬になれば冬ならではの小鳥が多数訪れます。どんなシーズンでも鳥のバリエーションが豊富な多々良沼は、まさにバードウォッチャーにとっては理想郷です。

写真:鷹野 圭

沼の上空に現れたミサゴ。主に魚を捕らえる猛禽類(タカの仲間)です。主食が魚なので原則としてこういう広い水場や海などにしか住んでいませんが、全国的に数はあまり多くなく、絶滅が心配されている鳥です。ここ多々良沼では然程珍しくなく、沼の上を旋回している姿がよく見られます。魚を捕らえる時には急降下して豪快にダイブし、その姿は迫力満点! ほぼ年間を通じて現れ、多くのバードウォッチャーを虜にしている罪な鳥です。

冬を前にした昆虫たちの姿も

写真:鷹野 圭

秋といえば赤トンボ。ここ多々良沼にもアキアカネが現れ、あちらこちらで見かけます。長い時には12月上旬くらいまで観察できるはず。紅葉を迎えた木々とのコントラストは、秋ならではの美しさです。

写真:鷹野 圭

秋深まった頃に大人になる昆虫といえば、このカマキリ。アキアカネなどと同じくやはり冬の始まりくらいまで姿を見かけます。草むらやヨシ原などを住処にしていますが、数が多いためか時には園路の上を歩いていることも。よくいる緑色ならまだしも、茶褐色の個体も多いのでうっかり踏んでしまわないように気をつけましょう。

写真:鷹野 圭

最後に、駐車場に出てきてしまったトノサマバッタです。背丈の低い草むらに隠れていますが、近づくと大きく飛び上がります。とてもすばしっこいので簡単に踏み潰されたりはしません。最近、都心などではあまり見かけなくなりましたが、ここ多々良沼では至ってメジャーな昆虫です。
秋が深まり冬が近づくにつれ、昆虫たちも次第に姿を見せなくなっていきます。カマキリやトンボの姿を見かけなくなったら、いよいよ本格的な冬に突入。そして、沼には白鳥たちがやってくるのです。

白鳥だけじゃない!秋こそ多々良沼散策へ

あまりにも白鳥の知名度と人気が高すぎて目立ちませんが、秋には秋ならではの出合いがあり、風景があります。シギ・チドリは9月末から10月いっぱいくらいまで姿が見られます(年によって異なります)。白鳥シーズンのその前に、一度足を運んでみては如何でしょうか?
【アクセス】
JR「館林駅」より徒歩約40分、または東武線「成島駅」より徒歩約20分、ほか
所在地/群馬県館林市日向町

■関連MEMO
多々良沼公園(群馬県観光情報サイト)
http://www.gunma-navi.net/10207001.html

【トラベルjpナビゲーター】
鷹野 圭

提供元:トラベルjp<たびねす>

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