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サファテと松井裕樹の成績がエグい。50セーブに0点台、でも実は対照的。

高校時代、甲子園での1試合奪三振記録で名を馳せた松井裕樹。今季はクローザーとして強烈なインパクトを放っている。

Numberの読者各位には、よもや「江夏の21球」をご存じない人はいないだろう。
1979年、日本シリーズで広島の救援投手江夏豊が、近鉄相手に逆転サヨナラのピンチを切り抜け、見事チームを優勝に導いた。その渾身の「21球」をつぶさに描いた故・山際淳司氏のドキュメントだ。
翌年の「Sports Graphic Number」創刊号に掲載され、スポーツノンフィクションの世界に新たな境地を拓いた金字塔だ。
今から思えば、このドキュメントは「救援投手」のステイタスを高めるうえでも、決定的な役割を果たしたと思う。
沢村栄治の頃から、日本の野球は「エースが投げて勝つ」が本筋とされた。救援投手というのは、先発完投できない投手が仕方なく務める「端役」のような扱いだった。
セ・リーグを代表する豪腕投手だった江夏が紆余曲折を経て救援投手になり、「江夏の21球」というドラマを演じたことで、救援投手は「投手のもう一つの花形ポジション」として世間に広く認知されたのではないか。

サファテがプロ野球史上初となる50セーブを記録。

それから38年、今季は日本の救援投手史上に残るシーズンになった。
言うまでもなく、ソフトバンクのデニス・サファテが初めて50セーブを記録したのだ。
<NPBのシーズンセーブ記録5傑>※サファテは2017年9月10日時点
1:サファテ 2017年(ソ)50セーブ(61試合2勝2敗3ホールド 61.0回 防御率0.89)
2:岩瀬仁紀 2005年(中)46セーブ(60試合1勝2敗2ホールド 57.1回 防御率1.88)
2:藤川球児 2007年(神)46セーブ(71試合5勝5敗6ホールド 83.0回 防御率1.63)
4:佐々木主浩 1998年(横)45セーブ(51試合1勝1敗56.0回 防御率0.64)
5:岩瀬仁紀 2007年(中)43セーブ(61試合2勝4敗3ホールド 59.0回 防御率2.44)
5:サファテ 2016年(ソ)43セーブ(64試合0勝7敗8ホールド 62.1回 防御率1.88)
サファテは昨年、パ・リーグ記録となる43セーブをマークしていたが、今年これを大きく更新した。NPBよりも19試合多いMLBでは62セーブのフランシスコ・ロドリゲスを筆頭に、50セーブ以上は14人いる。しかし55セーブ以上は4人だけ。
9月5日からの1週間で4セーブも稼いだ絶好調のサファテは、この勢いなら55セーブに乗せるのではないか。

防御率0点台前半の松井裕樹も、実は空前の記録。

実は今季、サファテ以外にも凄い記録を残している救援投手がいる。
楽天の松井裕樹だ。
今季7月まではサファテとセーブ数で激しく競り合っていた。左肩痛のために7月27日に登録抹消され、8月19日に再登録されたが、彼は48試合に登板して自責点はわずか2、防御率は0.36。これは空前の記録だ。
<過去、40試合以上登板した投手の防御率5傑>※松井は2017年9月10日時点
1:松井裕樹 2017年(楽)0.36(48試合49.2回3勝1敗 31S 5ホールド)
2:浅尾拓也 2011年(中)0.41(79試合87.1回7勝2敗 10S 45ホールド)
3:佐々木主浩 1998年(横)0.64(51試合56.0回1勝1敗 45S)
4:藤川球児 2008年(神)0.67(63試合67.2回8勝1敗 38S 5ホールド)
5:藤川球児 2006年(神)0.68(63試合79.1回5勝0敗 17S 30ホールド)
2011年の浅尾はクローザーではなくセットアッパー。この年37セーブした岩瀬仁紀につなぐ中継ぎとして圧倒的な成績を残し、セットアッパーとして初めてMVPに輝いた。しかし、この年の浅尾でも失点した試合が4試合ある。

48試合で2試合しか自責点がついていない。

今年の松井は、48試合で2試合しか自責点がついていない。
松井が今季最初に喫した失点は4月29日の日本ハム戦、9回裏二死から田中賢介にサヨナラ右前打を打たれたものだが、そこから9月5日の同じ日本ハム戦まで、実に4カ月、30試合も自責点0だったのだ。
なお9月5日の試合は9回から登板して、大谷翔平からタイムリーを打たれたものだった。
余談だが、この試合は「富山での日本ハムの主催試合」という極めて珍しい試合で、私はそれもあって球場で見ていた。その時点で「サファテと松井で書こう」と腹積もりをしていたのだが、大谷はボテボテながら右前に抜けるタイムリーを打った。大したもんだと思ったが、続くレアードに本塁打でも打たれたら、松井の防御率はだだ下がりになって原稿が書けなくなる!
思わずビールをもう1杯注文してしまったが、松井はレアードを中飛に打ち取って事なきを得た。

サファテと松井裕樹、好対照な成績って?

話は戻ってサファテと松井裕樹、2人は同じクローザーながら、実に対照的な成績を残している。
・出した走者(安打+四死球)の数
サファテ:61試合で42人 松井裕樹:48試合で50人
・許した得点(自責点)
サファテ:6 松井裕樹:2
・投球数(1イニング当たりの投球数)
サファテ:893球(14.6球) 松井裕樹:848球(17.1球)

松井は安打よりも四球を与える方が多い。

松井は26被安打に加えて24与四球。登板するたびに走者を出している勘定だ。しかし、塁に走者を背負ってからが松井の真骨頂で、なかなかホームに返さないのだ。
このあたり「江夏の21球」で、9回無走者でマウンドに上がって無死満塁のピンチを作り見事それを抑えきった江夏豊と同じ“マッチポンプ”だ。ちなみに松井も江夏と同じ左腕である。
対照的にサファテは走者をあまり出さないから、リスクが少ない。ファンはハラハラドキドキする「松井劇場」の方が楽しいかもしれないが、指揮官にしてみればサファテの方が安心して見ていられるだろう。
ただ、松井裕樹の今季被本塁打は0だが、サファテは本塁打を3本打たれている。難攻不落のサファテと対戦する相手は「本塁打でも打たないと点が入らない」と開き直るのかもしれない。サファテ自身、そういう大振りにはやや弱いところがあるようだ。

1イニング平均14.6球と省エネ投球のサファテ。

最後に球数だ。先発投手の場合、1イニング15球が目安だとされるが、救援投手は1イニングに集中するため球数が増えがちになる。しかしサファテの1イニング14.6球は先発投手と比べても遜色がない省エネ投球だ。
それに比べて松井は四球や無駄球が多いぶんだけ17.1球を要していて、いくら若いとはいえスタミナが心配になる。事実、今季の松井は3週間ほど戦線離脱した。若いとはいえ、もう少し効率を考える必要がある。
サファテは、今年の貢献度からすれば、MVPの最有力候補だ。一方で、タイトル獲得は難しそうな松井裕は、そこまで注目されることなくシーズンを終えることになるだろう。
だが、記録的に見れば両者は、ともに球史に残る。
2人のクローザーには、異なる「抑えの美学」があるように思う。
江夏豊が開拓し、佐々木主浩、高津臣吾、岩瀬仁紀、藤川球児などの先人を経て進化してきた日本の救援投手は、サファテ、松井裕樹という二人の逸材によって、新しいステージに入ったのではないだろうか。

提供元:Number Web

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